ティンクティンク-2
夢から醒めるといつもの自分の部屋だった。
安堵感とペリプリにもらった力の危険さを目のあたりにして、使う時は気を付けなくてはと自分を戒めた。
学校に着くとやはり真っ先に佐々木が駆け寄ってきた。
「本当に来たのね。でもどうやって来たの？」
放課後、図書館に呼び出してペリプリが来てからの一件を佐々木に教えてあげた。
もちろん、例の否定をしないように念を押してから。
「そんなことって…」
思わず佐々木の口を押さえた。
妖精は元気に今日も生きている。と念のために呟いておいた。
また今夜も行くよ。と伝えて帰路に着いた。
家に着いて服を着替えるとペリプリが枕元にまた倒れていた。
「妖精さんは無敵だから、元気に生きている！」と耳元で囁いてみた。
「あら、おかえり。」
とこないだと同じ挑発的な表情でこちらをむいた。
「誰かの夢行ってみた？」と尋ねるので学校の子の夢に昨日行ってきたと伝えた。
「くれぐれも気を付けなさいよ！」
まるで母親のように僕を諭した。
ネバーランドって本当にあるの？と聞いてみた。
ペリプリが言うには、ネバーランドは実在するらしいが、文明が発達していく中で人間は科学のみを信じて空想や夢物語を否定するようになり、ネバーランドも消え始めてきたという。
このペリプリをテレビにでも出演させれば、みんな信じるはずだけど、誰かが例の否定を一言でもしたものならペリプリは今度こそノックダウンしてしまうだろう。
ペリプリはネバーランドに帰る道を忘れてこの世界でしばらく物見がてら滞在していくらしい。
ネバーランドに行ってみたくなったが、当のペリプリが行き方を忘れてしまったんでは…
閃いた。
「ペリプリ！ネバーランドに行ける！って念じてから寝たら行けるんじゃないのか？」
ペリプリは黙りこくったまま何かを考えていた。
「それだけではダメ。
あと何かが足りないわ。」
しばらくうちに留まるようにペリプリには勧めた。
外で否定されて消えてしまうのが可愛そうに思えたからだ。
夢の世界についてももっと詳しく知りたくなった。
今夜も佐々木の夢へ行く。
押し入れを片付けて、布団と枕とコンビニで買ってきたミネラルウォーターをお皿についでペリプリの部屋を作ってあげた。
夜、念じて眠りにつく。
学校に僕はいた。
いつもみたいに授業を受けている。
隣の佐々木に学校を抜け出そうとノートの端に書いて見せた。
頃合いを見計らって別々に理由をつけて早退した。
夢なのに律儀な自分に苦笑しながらとりあえず家へ向かった。
佐々木にペリプリを紹介したかった。
自分の部屋に着いて押し入れを開ける。
「ちゃんとノックくらいしなさいよ！」とペリプリが膨れていた。
「ペリプリ、佐々木を連れてきたよ！」
と佐々木を紹介した。
佐々木は驚きを隠せないようだったが、この事実を受け入れたようだ。
しばらく談笑しているとまた世界が歪みだした。
「戻れ！」と強く念じたが、今日は夢が開ける方が早かったらしかった。
グニュグニュになった視界でペリプリが何かを叫んでいる。
何を言っているかわからなかったが、僕は世界から弾かれてしまった。