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「悪魔の少年」
【ショタ 官能小説】

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N似顔絵捜査-1

N似顔絵捜査



多摩川はモンタージュ写真はあまり好きではなかった。
画像がリアル過ぎて想像力が働かずちょっとした違いで見逃して
しまうからだ。
有名な三億円強奪事件の白いヘルメットをかぶった犯人の顔は全国的に知れ渡っている。
モンタージュでありながら本物の写真のような錯覚を呼ぶようだ。
それに比べて似顔絵捜査の方が特徴を掴みやすく検挙率も高い。グリコ森永事件のキツネ目の男が有名だ。
警察に似顔絵捜査官という役職は無い。今回協力してくれる彼女も所轄の事務員だ。
美大を出て警察勤務の変わり種だが昨年の警察似顔絵コンクールの優勝者だ。
それ以後は事務職というよりは似顔絵捜査の第一人者として全国の警察署を飛び回っている。
その彼女がたまたま空いていたので四国まで同行願ったわけだ。
まず新居浜の児童養護施設の別子学園へいざない理事長に面会した。
多摩川はその時の彼女の聞き取りの巧みさに舌を巻いた。目が大きいとか切れ長だとかは一切尋ねない。
「女優で言うと誰に似ている?鼻は?口は?」と言った調子だ。緊張をほぐす為に明るく冗談も飛ばす。
絵心の外に彼の頭の中にあるイメージを複写する才能に優れているのだ。
ただ時間はかかる。通常1時間くらいの作業だが彼女は3時間近くかけた。
でも緊張がほぐれているので疲れないのだ。
理事長は「うん。こんな感じだ。君上手だね。警察に置いておくのは勿体ないな。」と言って笑った。
この似顔絵を丸亀の永田校長に見せた。「よく出来ているね。でもちょっと雰囲気が違うな。
それにもう少しふっくらしていた
ような気がするな。眉ももう少し太くした方が似てると思うよ。」直ちに修正が加えられる。
「うーん、僕の頭の中のイメージ自体が鮮明じゃないんだ。考えれば考えるほど分からなくなるね。」
絵を裏向きにしてめくる動作を何度も繰り返す。「よし。こんな感じだ。」
彼女の次の似顔絵依頼に間に合う様大急ぎで帰路についた。
帰りの車中で「ごめんなさい。今回は上手くいかなかったわ。」と彼女は詫びた。
「そんな事無いだろ。目撃者の二人が似ているって認めたんだから。」
「確かにそうなんだけれどこの似顔絵じゃ多分犯人に行き着けないわ。
もっとディフォルメしないと見た人の印象に食い込め
ないのよ。
目撃者の二人が口を揃えて質素で暗い感じの人だって言ってたでしょ。この画像にはそれが無いもの。」
「そうか。人は実際の姿かたちよりもイメージの方が印象に残るって事だよね。」
「そうなのよ。私が似顔絵捜査に当たってからもうまくディフォルメできた時の方が検挙率も高いわ。
今回の様に目撃者が
年配の方の場合ちょっとディフォルメしただけで「違う。」とおっしゃるのでこんな感じの絵になってしまうのです。」
「分かった。年齢30〜35歳。身長150cm。英語訛り。の次に暗い感じを追加しておくよ。」
翌日、この似顔絵と注釈を全捜査員に配布した。
色んな情報が入ってきた。どこそこの奥さんが似顔絵に似ている。誰それじゃないかしら。というたぐいた。
しかし身長が160cm以上あったりただ単にヘアースタイルが似ているだけというような情報の方が多い。
それでも刑事たちは当事者に会い事情聴取を続けた。この日だけで50人くらいの人に会ったが不審な人はいなかった。


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