紅館の花達〜蒼猫花〜-6
『フィルさ〜ん、今朝のメニューはな〜に?』
『ゼロはんの好きなアジのヒラキやで〜〜!』
アジのヒラキはゼロの好物。 と言うよりも魚系は全部好きなのだが。
だがフィルにはゼロ達の姿が見えないためか、ゼロが一人だと思っているらしくこんな事を聞いてきたのだ。
『ゼロは〜ん、新入りの子ぉ〜、具合どないやった〜?』
その言葉にスーが首を傾げる。
『具合?』
慌てて誤魔化そうとするが、フィルは止まらない。
『いくら女好きやからって〜、そない処女さん食うたらあかんで〜〜〜♪』
決定打。
スーの頭の中でしっかりと意味がわかったようだ。
かなり冷たい目でゼロを見下ろしている。
『へぇ〜〜、そう。
本当に子供じゃないんだ〜。』
そういうと、スーはくるりと向きを変えて部屋の方に歩きだした。
『寝直すから。 私、女に興味も無いからね。
てか、空きが出来次第個室に移るから。』
『す、スーちゃ〜ん………』
『じゃあね。』
此方を見もせずにバイバイと手を振られ、取り残されてしまったゼロ。
『………い、今のは嘘やで〜〜〜』
ようやく気付いたフィルだが、その無意味なフォローはスーに届かず………
『うぇぇぇぇん!!!』
ここはウェザの部屋。
あれからすぐにゼロはウェザに泣き付いていた。
傍らにはアルネもいる。 もちろん、二人供裸のままだが。
『よしよし、そんなに泣かない。』
優しく頭を撫でてくれるウェザの胸の中でとことん泣いている。
好きになったばかりなのだが、早くも潰えてしまった。
『まぁ、スーの気持ちも分かるけれどね。』
そう言ったのはアルネだ。
相手がゼロだからか、綺麗な裸体を毛布で覆いもせずに話を聞いていた。
そんなアルネをゼロは見つめた。
『………欲しいよぉ………』
見つめるだけでなく、抱きついた。
『な、何?』
『アルちゃ〜〜〜ん………』
豊満な乳房に顔をこすりつける。
『私も女には興味無いのよ、離れなさい!』
ゼロの頭を掴み、離そうとするがゼロはまるで離れない。
『どうしたらこんなエッチな体になれるの?』
えっ? とアルネの動きが止まる。
『ゼロゼロもアルちゃんみたいに「ないすばでい」になりたいよぉ。
そしたらスーちゃんだって………』
そんなゼロの言葉に二人は溜め息を吐く。
ウェザはゼロの肩に手を置き、諭すように言った。
『ゼロ、体を大人にしたいならまずは心を大人にしなさい。』
ゼロは首を傾げる。 心とは?
どうやったら大人になれるのだろう。
『ゆっくりと考えなさい。』
ウェザの手が頭を撫でる。
いつも自分を撫でてくれる優しい手、ゼロは大好きなのだ。
『うん、ご主人たま。
ゼロゼロ頑張るね………』
ウェザの微笑みに送られて、ゼロは張り切って部屋を出た。