立花文恵(34)-7
「すっかり仲良くなっちゃったみたいね〜」
出来たてのチンジャオロースを運んできた文恵が、俺たちを見て微笑んだ。眼鏡が湯気で曇っている。
「いやいや、僕も寿さんに直接会って、信頼出来そうだと安心しました。是非、文恵を抱いて下さい」
「マジっすか……」
「他の人ともしてみることで、僕ら夫婦にとって勉強になると思うんです。寿さんのテクニックを盗ませて貰えるだろうし、それに……文恵も、たまには僕以外としてみると新鮮なんじゃないか、なんてね」
そう言って文恵を見やる悟さんの眼には、愛情が溢れていた。
妻にそんな気遣いするような夫は、なかなかいるものではない。
ある意味、文恵は絶対に「堕ちない」人妻かもしれない。が、夫の公認によって「抱く」ことは出来るのだ。
俺の人妻喰い経験で、こんな形の不倫セックスはお眼にかかったことがない。
しかし据え膳は遠慮なく喰わせて貰おう。
悟さんの見守る中で、旨みたっぷり脂が乗った文恵とエロエロに絡み合っていいという好機に、俺は喜んで乗っからせて頂くことにした。
「あの……予め断っておきますけど、俺、かなりのヤリチンっつーか……遊びで色んな女に手ぇ出してるチャラい人間です。それでも構わないんですか?」
後々のトラブルを避けるためにも、隠し事はせず赤裸々に己を開示しておいたほうがいい。
文恵の料理に満足し、ちびちびと酒を酌み交わしながら悟さんと話し込んだ。
「遊びって、要は割り切って色んな人と身体だけの付き合いをしているってことでしょう? 慣れているのなら、それはかえって安心出来ると言うか……」
「むしろ俺みたいなのが丁度いいってことですか」
「病気とかは困りますが」
「あっ、それは大丈夫です。安心して遊びまくれるよう、検査とか欠かしてませんから」
「凄いなあ。僕みたいな女房一筋のつまらない奴には窺い知れないものがあります。そこまで遊びのために心を配っているんですね」
感心されると恥ずかしくなってくるが、事実、人妻喰いという楽しみに人生を賭けている俺なのである。
身体は資本であり、異常がないようメンテナンスには注意を怠らない。
俺も酒は強いほうだが、悟さんの飲みっぷりは相当なものだった。イメージに過ぎないが、建設関係って仕事上でもかなり飲みそうという思い込みがあった俺は、その仮説が実証された気持ちだった。
明るく酔える点は、夫婦共通らしい。
水入らずの晩酌をして、ムードを醸造し閨に雪崩れ込むといったケースも多いのだろう。本当に仲睦まじい様子が見て取れた。何だか羨ましさを覚えるおしどり夫婦である。
だからと言って、文恵を抱くことに気後れを感じる俺ではない。
こうなったら、悟さんの眼の前で、夫婦間では見せたことがないほどの快感を文恵に味わって貰うまでだ。
悟さんより俺のチンポのほうがいいとまで言わせることが出来るか、やってみなければ分からないが、もしそんな台詞を文恵の口から吐かせたとしても、この夫婦に水を差す結果には立ち至らないだろう。
崩れる気遣いのない巨大な壁の前に立った俺は、せいぜい好き勝手な悪戯をさせて貰うまでだ。そして済んでからも、その壁が微動だにしないことを確かめ、安心して去ればいい。
夫公認の寝取りセックス。緊張するどころか、妙な心安さを胸に抱いて挑めそうだった。