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愉楽
【SM 官能小説】

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愉楽-9

ぼくって、ナオミさんを好きになりそうです……もしかしたら、こんな風に女性を感じるのは
初めてかもしれません。そう言った、タクヤさんの薄く開いたピンク色のきれいな唇のあいだ
に、真っ白な歯が初々しくのぞいているのが見えたときでした。
タクヤさんが欲しい……そんなわたくしの気持ちを察したように、彼はわたくしの頬を掌で
そっと触れました。彼の唇のあいだから、彼の若いからだの奥の瑞々しい性の香りが、微風と
なって今にも吹いてきそうでした。

そして、次の瞬間、彼はわたくしの顔を引き寄せるようにして唇を重ねたのです。わたくしは
小さな嗚咽を洩らし、からだを微かに強ばらせながらも、彼に身をゆだねていきました。
とても柔らかな唇でした。微熱を含んだ彼の甘い吐息が、わたくしの鼻腔をゆるやかにくすぐ
りました。

わたくしはタクヤさんと唇を重ねただけで、すでに自分のからだの奥に酔いしれるような火照
りをすでに感じ始めていました。わたくしの肩を強く抱きよせ、彼は貪るようにわたくしの唇
を啄み、舌先を差し入れていきました。湿った唇の内側をなぞり、並んだ歯のすき間に舌を
わずかに忍ばせる……強く密着した唇にお互いの体温とともに性の匂いが混ざり合っていくよ
うでした。
彼の舌先受け入れると、わたくしの口腔の中で、ふたりの舌が互いを求め合うように密やかに
戯れ始めました。唾液がねっとりと絡み、わたくしの口の中を彼はまるで性器を求めるように
捏ねまわしました。そして彼がわたくしを強く抱きしめたとき、わたくしは彼の吐息と唾液を
夢中で吸いあげたのでした。

彼はわたくしを床に押し倒し、慣れない手つきでわたくしの着物の胸元を肌けさせ、乳肌を貪
るように顔を埋め、唇を押しつけたのでございます。わたくしがタクヤさんの背中に手をまわ
し、強く、とても強く、愛おしく彼を抱きしめると、弾力のある、瑞々しいタクヤさんの肉体
がわたしの体の上で悶えるように撥ね、恥ずかしさもどこへやら思わずタクヤさんの薄いズボ
ンのふくらみを握り締めると、熱いものが掌にじわりと滲み入ってくるようでした。
そしてタクヤさんの手がわたくしの太腿の内側に伸び、脚の付け根に這い上がり、殻のような
貞操帯の触れた瞬間でした……わたくしは、はっと目を覚ましたのでございます。


夢でした。すべては夢だったのです……彼の声も、彼との接吻も、彼がわたくしを求めてきた
ことも……何もかもが。
わたくしはいつのまにかタクヤさんのいない彼の部屋のソファで深い眠りについていたのです。
タクヤさんはその日だけは、急に東京の大学に戻られて不在でした。だれもいない部屋には、
ただ、物憂い蝉の鳴き声だけが聞こえていました。


その夜、東京から帰って来た主人はいつもと違ってとても烈しかったような気がいたします。
わたくしの衣服を剥ぎ、外した貞操帯の内側に穴があくほど念入りに凝視し、滲み入った匂い
を鼻息荒く嗅ぎ、唇でなぞると、《わたくしの貞操》のわずかな異変に気がついたのでしょう
か、そのときの主人の顔は、わたくしがこれまで見たことのない、ぞっと身震いするような陰
湿なものでした。

濡れすぎたほどの蜜汁の痕だ、いったいどういうことだ、ナオミ……。

わ、わたくしはタクヤさんとは何もありません。思わず吐いてしまった言葉でした。主人は
にやりと淫靡な笑みを浮かべると、やはりナオミはタクヤを好いているのだな、この貞操帯が
それをしめしているではないか。
夫の手から逃れようとすると、いつのまに用意していたのか、夫はたぐり寄せた縄でわたくし
を後ろ手に縛り、ベッドに押し倒し、無理矢理に開かせた足首をベッドの端々に括りつけたの
でございます。


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