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Overtake goodbye
【姉弟相姦 官能小説】

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B-8

 十月に入ったばかりなのに、黄昏時を迎えて、今日は昨日より肌寒く感じる。

 「あ……。ふぅ。」

 それでも、こんなに欠伸が出るのは、一昨日からの睡眠不足が今頃になって堪えて来ているようだ。

 「ずいぶんとお疲れみたいですね。」

 吉川が訊いてくる。腑抜けて見える俺の態度が、気になるのだろう。

 「ああ。昨夜は、遅くまで付き合わされてな。」

 うたた寝しそうなほど無防備の中、思わず口を吐いた言葉に、俺は平常心を失った。
 心臓を鷲掴みにされたような衝撃が胸を突き、次第に鼓動が速くなる。全身が熱を帯びてゆき、額やこめかみが汗ばんでいく。

 「相変わらず、お姉さんと仲がよろしいんですね。何だか羨ましいですよ。」

 刑事顔負けの鋭い洞察力を持つ吉川が、今回はピント外れな解釈をしてくれたことで、俺は助けられたようだ。

 「──ウチの妹なんか、最近じゃ益々、口を利いてくれなくて。たまに話し掛けてくる時は、物をねだるか小遣いが欲しい時くらいですよ。」

 そういえば、あの時も妹と比較して羨んでいたな。確か、高校生と言ってたから、今は大学生くらいだろうか。

 「どこの兄妹でも、そんなものじゃないか?だいたい、異性の兄弟は年齢を重ねるにつれ、本能的に距離を置くようになるって、お前が俺に言ったんじゃないか。」
 「頭では判ってるんですが……。僕にべったりだった頃があったので、つい、それを望んでしまうんです。」
 「仲が良いってのも考えものだぞ。一歳しか違わないのに、今でも、いいように振り回されてる。」

 隣の芝生は青く見えるのと同じで、過干渉に不干渉。どちらも内情を知らないから、無い物ねだりをしてしまう。

 「──お前の妹さんだって、ウチと大差ないさ。お前が大怪我して輸血が必要になったりしてみろ。真っ先にくれるさ。」
 「まさか!あいつに限ってあり得ませんよ。」
 「本当だよ。賭けたっていい。“血は水より濃し”って諺があるくらい、血縁関係のつながりは、他と比較して強固なものなんだ。」

 見た目は犬猿の仲でも、その根底はしっかりと繋がっている。それが肉親というもので、その愛情はいざという時にしか見えない場合もある。

 「──その妹さん、恋人とかはいないのか?」
 「どうして、そんなこと訊くんです?」

 俺の問いかけに、吉川は不機嫌そうな顔をした。

 「いや、下衆の勘繰りというやつさ。お前に近寄ってくる時は金品絡みなんだろ。なぜ金品が必要かをたどれば、恋人か友人との付き合いくらいじゃ……。」

 俺の推論を遮って、怒気を含んだ吉川の声が車内に響く。

 「あいつに限って、そんなこと有るはず無いじゃないですか!大学の友人達との付き合いだって言ってるんですから。
 いくら先輩だからって、失礼じゃないですか!」

 過剰な反応は想定していたが、まさかこれ程とは思いもしなかった。

 「すまなかったな。おかしなことを訊いて。」
 「本当ですよ!」

 案外、こいつのこういう部分が、妹が距離を置いた原因なのかも知れない。


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