B-12
「──仕事中、ずっと考えてたさ。どうすれば良いのかって。でもさ、正直、何が最善なのか判らなかったんだ。」
「判らないって。何が?」
「だって、和巳が俺と姉さんの子なら、俺は姉さんと和巳を養う責任があると思うんだ。
それに、俺と姉さんは姉弟だから、成長した和巳は、いずれ、自分の出生を知りたがる。その時は、どうすればいいのかとか……。他にも親父やお袋、それから親戚との関係も断たなきゃならないだろうし……。」
俺は、昼間、纏まらなかった考えを一つ々、口にしていった。
最初、亜紀は黙って聞き入っていたが、途中で突然、俺の傍に立つと、髪の毛を両手でぐしゃぐしゃにし出した。
「な、何をするんだよ!」
「あんたの事は、昔から“出来の悪い弟”だと思ってたけど、ここまでバカだとは思わなかった!」
「なんだよ!バカって。言ってる意味が判らないよ。」
そう言って俺は亜紀の手を掴んだ。
その顔を見ると、亜紀の瞳は涙で潤んでいた。
「もう寝るわ!そこに用意してあるから、後は勝手にしなさい。」
何が何だか訳が判らないまま、気づけば亜紀は和巳の元に消えていた。
(どうやら、俺は重大な失敗を冒したようだ。)
リビングのテーブルには、ポテトサラダにトリ南蛮、具沢山の味噌汁。どれも俺の好物ばかりが並んでいた。
「いただきます……。」
好物とは言え、一人で食べる食事ほど侘しく感じるものはない。
(──俺なりに一生懸命考えたつもりだが、亜紀をあんなに、傷つけてしまっていたなんて。)
やはり、俺も問題の当事者になった途端、俯瞰的な物の捉え方が出来なくなってしまうようだ。
(何とか、亜紀がこっちにいる間、この問題を解決しないと。)
そう思いながら思考を巡らせるが、結局、きっかけさえ見出だす事も出来ないまま、ここ二日間の寝不足が祟り、いつの間にか眠りこけてしまった。