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雨の夜
【OL/お姉さん 官能小説】

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雨の夜-4

「あー、まだ降ってたか」

 店の外に出るといくぶん弱まってはいるものの、まだ雨は降り続いていて、駅からここまで来た時と同じように平野がさしてくれた傘の中、腰に手を回された。

「大丈夫?」

 至近距離で平野が訊ねた意味がわからず、首をかしげる。

「手、震えてる。寒い?それとも怖い?」

 震えていたのは自分でも気がつかなかった。

「こ、怖くはないです。緊張はしてますけど…」

「夏乃ちゃん、可愛い。手、冷たくなっちゃうでしょ?ここに入れてごらん?」

 がっしりとした腕に、夏乃の腕をからませ、ダウンの左ポケットに手をしまわせると、再び夏乃の腰に手を回して歩き出す。道なりに駅と反対方向に5分ほど歩くと目的地が見えてきた。

「ここで、この時間だから泊まりでいいかな?」

 こくんと頷いた夏乃をエスコートして建物に入ると、手慣れた様子で部屋を選び、フロントで会計を済ませる。エレベーターに乗り込み、扉が閉まった瞬間。夏乃は平野の腕の中にいた。恥ずかしいのと緊張しているのとで、平野の顔がまともに見れず、平野の厚い胸に顔を埋める。

「大丈夫、夏乃ちゃんの嫌がることはしないから」

 落ち着かせるように夏乃の頭を撫で、顎に触れるとそっと唇を唇でふさいだ。ほんの一瞬のことなのに、溶ける、と夏乃は思った。アルコールの力なのだろうか。それとも夏乃をオンナとして扱ってくれる平野の醸し出す雰囲気に飲まれているのだろうか。
 ボーッとする頭の中、たどり着いた部屋の玄関で、ドアが閉まった瞬間、激しく抱き締められた。軽く混乱している夏乃の唇を荒々しくふさぎ、厚みのある舌が夏乃の口内に侵略してくるのを、夏乃はいとも簡単に許した。いつの間にか、傘もカバンも放り出していた平野は、夏乃の肩にかかっていたバッグも優しく外し、床に置いた。コートの上から撫で回されているだけなのに、呼吸がどんどん荒くなり、大きな手のひらが胸を掠めただけで、声にならない声が漏れ、唇が離れていく。

「ごめん。上がろっか?」

「はい」

 キスだけで、腰砕けになりかけている夏乃の頭を撫で、平野は靴を脱いだ。夏乃もそれにならい急いで靴を脱いで揃えて中に入る。そういうホテルにしては部屋は広めで、落ち着いた感じだった。平野がコートと、スーツの上着を脱いだのを見て、夏乃も慌ててコートを脱ぐ。平野はコートを受け取ると、ハンガーにかけてくれた。

「寒くない?」

 こくんと頷くと、再び平野の腕の中。キスの雨が降ってくる。おでこに、頬に、耳に。壊れ物を扱うかのような優しさ。
 唇と唇が重なって、意を決して平野の首に手を回したのが引き金になった。平野の口撃が荒々しいものに変わる。腰から臀部にかけて撫で回していた手が、器用に夏乃のロングスカートの裾をたくしあげ、太腿をさすり始めた。足を拡げさせ、下着のラインギリギリを指が這う。夏乃が唇を塞がれたまま漏らした声に、下着の中に指が侵入してきた。

「ん。すごい濡れてる」

 耳元で囁かれる声が、熱い。

「いやっ」

「イヤなの?やめる?」

 余裕たっぷりに夏乃を見下ろす顔が、ちょっとだけ憎たらしい。

「夏乃ちゃんの嫌がるようなことはしないよ」

「…い、イヤじゃないです…」

「イヤじゃないの?じゃあ、お風呂一緒に入る?」

「はい」

 思わず返事をした夏乃を見て、平野は笑う。

「夏乃ちゃんの返事、好きだよ。ちょっと待ってて。今お湯入れてくるから」

 ソファへ誘導され、夏乃が腰を下ろすと平野はバスルームに消えた。しばらくして戻ってきた平野はワイシャツの袖を捲りあげている。がっしりとした腕に、夏乃の脈がはねる。

「ん?どうした?」

 首を横に降った夏乃の隣に腰を下ろし、優しく抱き寄せてくれた。

「セクシーだな、と思って」

「え?誰が?オレ?初めて言われた」

 素で照れる辺りが可愛らしい。年上の男性にとって、“可愛らしい”は褒め言葉じゃないかもしれないけど。

「あ。ようやく笑ってくれた」

「え?」

「誘い出した辺りから、夏乃ちゃん困った顔してて、笑わなくなっちゃったから。オレ、強引にこんなところ連れ込んじゃって、もしかしてセクハラとかパワハラで訴えられるかなとちょっと怯えてた」

「まさか。ここに平野次長と一緒に来たのは自分の意思です」

 終始余裕があるように見えたのに、そんな風に思ってたなんて。

「したい?」

「…したい、です」

 真っ直ぐ覗き込んでくる視線からそらさずに答え、シャツ越しの腕に触れる。

「オレも夏乃としたい。夏乃に名前で呼ばれたい。もしかして名字が平野で名前が次長とか思ってるとか言わないよね?」

「思ってました、っていうのはじょうだ…あっ」

 首筋を強く吸われ、最後まで言葉にならない。

「意地悪言う子にはお仕置きだな」

「んあっ、子ってよんでもらえるような年齢じゃぁっ、あんっ」

 身をよじっても、唇で、指で、手のひらでいとも簡単に快感を与えてくる。まるで平野の手のひらの上で踊らされているようだ。

「夏乃、いい匂いする」

「やっ、汗かいてますっ」

 いくら肌寒い季節といえど、暖房が効きすぎる場所にいたりするのだ。

「じゃあ、お風呂入ろうか。脱がせていい?」

 好きだと言ってくれた返事は、恥ずかしさのあまり小さくなる。それでも平野は満足そうに、夏乃のグレーのニットに手をかけた。これなら、もっと脱がされる時に色気のある洋服を選べばよかった、と思う。肌着も脱がされ、スカートも床に落とされた。下着だけになると本当に心もとない。

「色白だし、キレイな肌だね」

「そんな、シミだらけだし…恥ずかしい、です…」


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