人生最初のオナニー-4
遂にぼくは、自分の今の身体で快楽を得る手段を知ってしまった。
「はあ……あ……あぁ……」
左手の指で乳首を捻ったり挟んだりして刺激を与えて、右手は愛液で濡れた指でクリトリスをこする。
無自覚に与えられたプログラムに沿って、ぼくの手が自分の身体を弄っていた。
身体の二カ所から全身に向かってジワジワと快感が広がり、フワフワと水の上に浮かんでいるような感覚を得た。
それがとても心地良くて、ずっとこの気持ちよさに浸っていたいと思っていた。
だけど次第にそれは形を変えていき、突然水の中に引きずり込まれるかのような怖さを覚えた。
するとその恐怖感をかき消そうとするように、胸を掴む手がギュッと強くなり、指の動きが激しさを増していった。
今まで穏やかだったはずの快感が、幕を切り替えたかのように激しいものへと変異する。
稲妻が何度も身体を通り抜け、そのたびに頭の中で何度もフラッシュが焚かれる。
「あ……やめて……やめて……」
涙をボロボロと流しながら、自分自身へ向けて譫言のように懇願する。だけどその願いは決して受けいられることはなかった。
頭が真っ白に染まっていく。余りにも強すぎる快感の渦に飲み込まれていくぼくの心が壊れていくような、そんな気がした。
そして、ぼくの身体はその快感に耐えきれなくなってしまった。
「あああああぁぁぁぁぁ……!!!」
狭いシャワー室に激しく反響する自分の声と共に、ぼくは頂点に登りつめた。
射精したときの気持ちよさが長く長く、永遠に続くかのような感覚で、視界に白い光の粒がずっと瞬いている。
だけどぼくはこの気持ちよさに経験があった。
微かに動いている頭を働かせて、ぼくは思い出した。
“最後の”オナニーと同じだ。“最初の”オナニーと一緒だ。
それが分かると、ぼくはようやく気を失った。