ゴカイノカイギシツ-8
「イヤ…硬いの、当たってる…」
しばらくして唇を離すと、ルカが頬を膨らませて上目遣いでこちらを見る。
「ルカとキスすると気持ちよくなるんだもん。仕方ないだろ?飯よりも先にルカ食べたくなった」
「もう、仕方ないなぁ」
そう言いながら、ワイシャツのボタンを一つ一つ外し始める。アンダーシャツを捲りあげると、乳首をいきなり甘噛みした。手はズボンのチャックをまさぐる。
「先にベルト外さなきゃ」
「ベルト、外して。苦手なの」
ベルトに手をかけるとまた乳首に口擊を仕掛けてくる。そのうちすぐそばの肌に吸い付いて、キスマークをつけた。
「イヤ?」
「イヤじゃないよ。でもつけられるよりつける方がいいな」
「まだダメ」
腹にも数ヶ所吸い付いて、ズボンもトランクスも足元に落としながら、オレの前に膝まづく。
「うわっ、まだ洗ってないぞ」
いきなりそれを咥えて、涙目になりながらこちらを見上げている。右手はタマを弄び、左手は腰から尻にかけて優しく撫でまわす。頭を前後にゆらし、舌を懸命に動かしながら上目遣いで見られたら。
「ルカ…ダメだ…」
「んん…気持ちよくない…?」
「逆。気持ちよすぎ」
納得がいかないといった表情のルカを抱き上げ、キッチンから部屋へと移動する。ルカと暮らすようになって、シングルベッドは処分した。昨日横になったまま、畳む気力もなかった布団にルカを転がす。
「なぁ、昨夜はどこにいた?」
服を1枚づつはがしながら、首筋に舌を這わせる。
「…連絡しないでごめんなさい。寺島係長ご夫妻と飲んでました」
「ご夫妻?」
「はい。奥様、私の教育係だったんです。石塚ミチルさん、ご存知ですか?」
「石塚ミチル?え?ミッチー?あのアネゴ?」
「ミチルさんはタナケンって仰ってました」
アネゴがツボだったのか、ミッチーがツボだったのか、ルカがようやく笑顔を見せてくれた。
「あー、そうだったのかぁ。前同じ支社で働いていたことあってさ。よく飲みにいった。そっか、寺島係長と結婚したのか。今どこに?」
「本社です。それで、ウチのそばで飲みました」
「そっか。てっきり寺島係長と2人で飲んでたのかと」
「浮気してる、って思いました?」
「…実はちょこっと想像した」
ー実はちょこっとどころではないけれど。
「じゃあ、おあいこでっ、ふぁっ」
ルカもきっと、想像していたのだろう。最後まで言いきらせず、露になった蕾を口に含むと声にならない声をあげる。先ほどされたことを、同じようにルカにしていく。胸にも腹にも無数の跡をつけたら
「んもぅ、せめてブラで隠れるところにしてくださいっ」
と怒られた。女子は更衣室でブラだけになることだってあるんです、と。
「ごめん」
素直に謝ると、優しく頭を撫でてくれる。どっちが年上なんだかわかったもんじゃない。精神年齢はルカのほうが確実に上だろう。
無駄話はやめて、ルカを鳴かせることだけに集中する。素直に快感を受け入れようとしないのは、相変わらずで。その姿に余計にそそられる。
何があってももうこの人だけは手放したくない。結婚なんて鎖で縛り付けられないことは百も承知だけれど。悲しませないなんて約束は、年齢差を考えたら守れる約束じゃないのに。
すでに蕩けきったルカの中にゆっくりとゆっくりと押し入っていく。相変わらず最初は辛そうで申し訳なくなるけれど。思わず声を漏らしたこちらの頭を再び撫でてくれる。お互いにだんだん余裕がなくなってきて、手を繋ぐ。左手の薬指の静かな光がなまめかしい。
「出ちゃいそう」
汗だくになりながら、そう囁くとこくんと頷く。
「中に出していいの?」
「それはまだダメ」
「コドモ、欲しくない?」
「欲しいけど、だって仕事のこともあるし、プロポーズはしてくれたけど、入籍だってまだだし…」
ゆっくりと動きながら、それでも気持ちよくて、時々喘ぎながら会話を続ける。
「じゃあ、明日入籍するか?」
「…中出ししたいから?」
「違うって。早くルカを嫁さんにしたい」
「でも明日も仕事だよ?謙一さんだって、今日早く帰ってきちゃったから、明日も残業でしょ?一応親にも報告しなきゃいけないし…」
やっぱりルカのほうが大人だ。母親が出ていってそう経たないうちに再婚した父親とは、年に数回祖父母や叔母の法事で会うだけだと話していたけれど。
「式、するか?」
「んぁ…その話はあとで…もう限界っ」
自分からキスをねだり、腰を動かし始めたルカの動きに同調させる。セックスの最中に言われた「好き」は信用しないと言われたけれど、名前を呼び好きだと告げる。途切れ途切れの声で
「私も…謙一さんが好き」
と応えてくれたルカを強く抱き締めた瞬間。ルカの中が激しく蠢いて、すんでのところで抜き取った。ルカの白い腹に、白濁液をばらまいた。
「…すごい汗」
優しく指で額をなぞってくれる。
「ごめん。汗臭いよな。でもごめん。オジサン、力使い果たした」
「臭くないし、大丈夫」
重いし、腹部も汗で濡れた肌が触れるのは気持ち悪いだろうに、オレを受け止め、撫でてくれる。そのまま眠ってしまいそうなほど、心地がいい。
「まずは、ルカのお父さんにご挨拶しないとだな」
「まぁ、仕方ないですよね」
どこかドライなのは、やはり複雑な感情から来ているのだろうか。
「ウチの実家にもか」
「こんな若い姉ちゃん連れてきてって怒られません?」
「それはむしろルカのお父さんにだろ。下手したら対して歳変わらないだろうし。ウチの両親は、でかした、って万歳するかもしれないな」