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はるかぜ
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しりとり-2

「ゆるいねー」

二人でふっと笑みが漏れる。くるくる回る指輪をしばらく見た後、私は春風の前にそっとそれを置いた。

「やっぱりいいや。ゆるくて落しちゃいそうだし」

春風は苦笑いを浮かべてそうだね、と呟き、それを右手の中指に戻した。

「そういえばね、雨水がりつの衣装を決めたいって言ってたよ」

ミラノフウカツレツは思ったより硬くなっていて、ちょっと真剣に格闘していた私。その言葉で顔を上げた。

「へ?あ、うん。いつでも、いいよ。ラジオが終わったあとなら」

そんな事言われなくても雨水は分かっている、はず。それでもあえて聞いてくれるのは多分、体調を考えてだろう。

「分かった。雨水に言っておくよ」

春風はあっという間にミラノフウカツレツを切り分けて一口目を口に入れていた。

何となくそこで会話は途切れてしまった。こうやって仕事の話が出てくるとお互い、ギクシャクしてしまうのだ。別にそんなこと気にしなければ良いんだけれど、でも、どうしても気になってしまう。

恋人同士であると同時にビジネスパートナーなんだって、事。

シンとした食卓。お互いの咀嚼だけが響く。久しぶりに会ったのに、勿体無いなぁ。
もそもそとミラノフウカツレツを咀嚼していると突然春風が言った。

「ミラノフウカツレツ。……つ」

俯いていた顔を上げる。春風がもう一度言った。

「『つ』だよ、りつ」

首を傾げる私。それでも、二回目の言葉を聞いてピンと来た。

「あっ! つ、つー……つくし」

うんうん、と頷く春風。そして

「正月」

と答えた。

「え、また『つ』? うーんと……つみき」

「き、かー。そうだな。きもち」

「ち……知恵の輪」

いつの間にか二人とも食事の手を止めて考え始めた。熱中してそういうこと一緒にやるのは、初めてだね。

「わー…わたし」

「しー……シーラカンス」

「すごく」

「くー? うーんと。茎……」

側にあった花瓶にささったガーベラの茎が目に入ってそう答える。春風はそれを聞いてしばらく悩んだ挙句、口を開いた。


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