シャリィ・レアリル-13
事が進めばシャリィが心から快楽に溺れるのに時間はかからなかった。
翌朝目を覚ました頃には悪魔に「次はいつしてくれるのか」とおねだりをしている程だ。
けれどシャリィは他の女性達ほど無差別な性に溺れはしない。
この城で悪魔にのみ心酔し、依存する。
他の魔物や男に決して股を開く事なく、心から悪魔を愛すようになっていた。
「もー、ご主人様ったら。シャリィが食事と取らなくなってやつれていった時は本気で心配したんですからね」
「ごめんごめん。けど上手くいっただろう?」
「そうですね。あれからシャリィとはちょくちょく話すようにもなったし、万々歳です。魔物様のチンポについてガールズトークできないのがちょっと寂しいけど」
悪魔の自室で肩を抱きながらエリザが彼のペニスを扱き上げながら会話をしている。
とてもインモラルな光景だが、二人はそれが一番の安息の時といわんばかりの光景だ。
シャリィは・・・彼女の中で気持ちの整理ができたのか、エリザや他の女性達とも普通に接し会話をするようになった。
むしろ節操なしに肉欲に溺れる彼女たちを仕方ないなぁ、と見守りながら後片付けを手伝うほど。
肉体関係を持つ事はなかったが、魔物相手でもヤンチャな子供に接するかのように優しく対応している。
少なくとも魔物への嫌悪感はほとんど薄れたようだ。
一度は完全に折れかけた彼女の心だが、悪魔に心を委ねる事で立ち直った。
これで並大抵の事では心が揺さぶられないし、辛い事があっても悪魔を心の支えとすることで強く立ち回れるだろう。
彼女は元々面倒見が良く、同性のエリザから見ても姉や母のように感じるほどの包容力があった。
今回の事で自分では理解できない相手、時には魔物すらも受けとめる包容力へとなる。
エリザや他の女性のように、ただ肉欲に溺れるだけの者にはできない事だ。
だからこそ悪魔が直接シャリィに手をかけて堕としていった理由になるのだが。
「そういえば街のギルド長に渡した物ってなんだったんですか?腕輪をつけてたら直ぐ通されたし」
「あの腕輪は騎士団への反抗組織の証らしい。それも黒曜石の腕輪は騎士に反発心を持つ貴族のでね。だからエリザを見て遣いの者だと勘違いし、ご主人様によろしくとか言ったんだろう」
エリザに渡した黒曜石の腕輪は、悪魔が貴族の館へと侵入し盗んできた物だ。
・・・つまり、シャリィは悪魔の計画通り『悪魔とギルド長が賄賂で繋がっている』と勝手に勘違いしただけで二人の間に特に関係はない。
エリザに紛らわしい行動を取らせただけでシャリィが勝手に勘違いをしたのだ。
他にはエリザにシャリィとしばらく距離を取れと命じたりもした。
エリザは確かに肉欲に溺れはしたが、シャリィの事を忘れたワケではない。
優先度が変わっただけでシャリィを思う気持ちは微かに残っている。
彼女はシャリィと違って相棒に絶望もさせられていないのだから。
この城へと招きいれられたのは操られたシャリィに襲われた事がきっかけだが、それもこの城での生活に溺れた今となっては些細なことでしかない。
更に、性行為の際もちょっとした仕掛けをした。
キスをしてエリザと同じ味をした唾液を流し込んだ時、敢えて完全には再現しなかった。
久しぶりのエリザの味だ。
少し変わっただけでは違和感もあまり感じないだろう。
感じたとしても感情を大切にする人間にとって、相手が違うから違和感を感じているんじゃないかという勘違いをする。
その後、エリザに似せた舌の感触や唾液の味のままお仕置きと称して朝まで全身を舐め回してやった。
お仕置きという体でエリザに似せた感覚を刻み込ませる事で、いざ本物とキスした時にも違和感を覚えさせるようにする。
慣れたはずの物とは違う感覚、普段と違うエリザの態度。
想像していたエリザを感じる事ができなくて彼女を素直に愛す事ができなくなる・・・という仕込みだ。
シャリィが何処まで自覚していたかは分からないが、こういった所にまで悪魔の手は回っていた。
悪魔は人を堕とすのに心を操る薬も魔法も使わない。
けれど裏では手を回して追い詰め、人を堕としていくのだ。
「とはいえこれからはギルドや騎士団とも関わっていく必要があるからな。その時はまた手伝ってもらうよ?」
「は〜い!」
エリザは心から悪魔に心酔した瞳で元気よく返事をした。
・・・魔物による人間の支配はまだ始まったばかりにすぎない。