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魔へと溺れユく女タチ
【ファンタジー 官能小説】

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セイン・アルバート(前編)-1

首都レグナント。
オレことセイン・アルバートはこのレグナントの街で騎士として街や民を守っている。
歳は23。恋人との関係も良好だ。

少し問題があるとすれば恋人との立場上での関係か。
この街に大きく分けて三つの勢力の存在が少しばかり厄介な事になっている。

一つはオレが所属する騎士団。
一つは冒険者達の集まり、ギルド。
一つは恋人であるクラリス・フォルティアナが所属する、聖職者達の集まる教会だ。

ここ最近は何故かこの三勢力間の関係があまり良好とはいえない。
しかもその不仲になった理由が冒険者に協力した教会の面々が複数人行方不明になったとか、冒険者と騎士団の仕事上の衝突だとか、騎士団が信仰する戦神と教会が信仰する大地神が不仲であるとかいう宗教上の問題だとか。

少し前まではなんとか歩み寄っていたが小さな不満の蓄積が破裂し始めたようで、最近は街の雰囲気すらも悪く感じる。


勿論、オレとクラリスのように個人個人では恋仲やら普通に仲の良い人達もいる。
けれど過激な連中は今にも騒動を起こすんじゃないかってくらい荒れている人達もいるのは確かだ。
どの勢力にも過激派と穏健派が存在し、組織内でも悶着があったりするのでとにかく最近は物騒だ。


せめてもの救いはオレのような下っ端でも他の勢力の人と自然に仲良くしている事が過激派への一番の薬になるとかで、穏健派の人達はオレ達の仲を応援してくれている事か。
過激派だとか穏健派だとか、そんな事情はオレとクラリス関係ない事だが応援してくれるのは素直に嬉しい。


今日も穏健派の偉い人に美味しいレストランの食事券を貰ったりしたしな。
これで恋人と食事でもしてこい、なんて言われたりして。
組織争いに巻き込まれたくはないが、これくらいで貸し借りだとか言われてこき使われたりだとか弱みを握られたりはしないだろう。


料理の評判は良いが値段も張る高級レストランの食事券。
ちょっとしたレア物だったからクラリスも喜んでくれたし。




「やはり、最近はそういった話しばかりになってしまいますね・・・」

「ごめん。折角のデートなのにつまんない話ししちゃって」

「いえいえ。私はこうやってセインと一緒に食事できるだけでも嬉しいです」



早速食事券をクラリスとのデートに使わせてもらったが・・・話題が全然面白くなかったな。
情勢が不安定なのでどうしてもそんな話しが出てしまったのだけども。


クラリス・フォルティアナ。
オレの恋人で、教会に所属する聖職者だ。
歳は25でオレより二つ上。新入りのシスター達をまとめ上げる、ちょっとだけ偉い立場にいる人だ。

髪は黒のロング。
穏やかな性格や、オレより年上なだけあって清楚なお姉さんといった雰囲気だけども意外と甘えるのが好き。
日頃から頼られる立場だからかオレには甘えたがる姿をよく見せてくれて、彼氏冥利に尽きる。

今は仕事とは関係なく食事に来ているのでシスター服ではない。
お高いレストランに合わせて紺色のカジュアルドレスを着ていて、とても綺麗だ。
クラリスはドレスなどもしっかり着こなすけれど・・・オレのように普段から訓練とかで汗まみれになっているような野郎にはスーツは似合ってないだろうなぁ。
クラリスがしっかり着こなしてる分、馬子にも衣装なオレとだとこの場では不釣り合いに見られていないか不安だ。



「そうだ、暗い話しばかりじゃなくて最近良い話しもあったの」

「お、いいね。そういった話しをどんどんしよう」

「一月前に行方不明になった人達が戻ってきたの。行方不明の間お世話になっていた村に恩返しがしたいって事でまたすぐいなくなっちゃったけど、私の後輩も元気な姿を見せてくれて良かったわ」



そいつは良かったと相槌を打って話しを盛り上げる。
先月の・・・冒険者と応援に行った教会のシスター達が行方不明になった事件か。
最近は魔物が今までより狡猾になったのか行方不明になったり死者が出る事件が増えたんだよな。

その事に触れるとまた空気が重くなりそうだったので、今はただ無事だったクラリスの後輩達の事を喜び合おう。



「あ・・・」

「どうした?気分でも悪くなってきたか?」

「ちょっと・・・ワインが強かったかも。頭がぼーっとしてきた」



会話を弾ませながら食事をしていると向かいの席に座ったクラリスが顔を真っ赤にしていた。
少し汗ばんでいて、首筋からドレスの下へ流れる汗が色っぽい。
クラリスは、あまりお酒に強くないのに積極的にワイン呑むなんて珍しい。



「ふふ・・・」

「ど、どうした?」

「はじめてセインにお持ち帰りされた時の事を思い出しちゃって。今日もしっかり介抱してくれるんでしょう?」

「は、はは・・・」



まだ若いけど、その件はホントに若気の至りというか。
クラリスと正式に付き合う前に、彼女をどうしてもモノにしたくて無茶してしまった事がある。

けれどクラリスも今は笑い話にしてくれているし・・・誘われているというのは鈍感なオレでも流石に分かるぞ。
ゴクリ、と生唾を飲んで下半身も強く反応しそうになるのを抑えるのに必死になる。
ここでいきり立っても、まともに動けなくなるだけだ。

普段はお淑やかで清楚なのに、オレの前でだけはこんな妖艶な姿を見せるなんてズルいぞ。



「そ、そうだな。そろそろ帰るとしようか」



声が上擦るのをなんとか抑えながら会計を済ませにいく。
店を出たところでクラリスはオレの右腕に抱きついてきて。
彼女の柔らかさと暖かさを感じながら宿へと向かった。


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