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俺は他人棒
【熟女/人妻 官能小説】

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森崎智美(38)-2

「ま、嫌いじゃないっすね。特に森崎さんみたいな美人なら」
「口が上手いなあ。そうやって色んな人にちょっかいかけてるんじゃない? もしかして、職場の人も……」
 警戒する口ぶりになったので、俺は慌てて否定した。
「んなことしてたら、とっくにクビになってますって」
 実のところ、職場には俺を介しての「姉妹」がごろごろしている。その姉妹同士では互いに感づいていたり、または秘密を共有し合っている者までおり、さながら俺という君主を取り巻く大奥の如き様相を呈しているのだが……。
「ふうん? ま、そっか」
 疑り半分の顔だったが、智美は納得したのか、残っているアイスコーヒーのストローを咥えた。やはり、魅力的な唇である。
「……ぶっちゃけ、森崎さんは不倫とか、どう思います?」
 俺はずばり訊いた。
「何それぇ。言っとくけど、ないからね?」
「ないって、何がですか? え、まさか俺が誘ってるとか思ってる訳じゃないですよね。そんなん一言も言ってないですよ!?」
 言葉尻を巧みに利用して、こちらのペースに乗せるのは得意技だ。これで、むしろ智美から誘いをかけたかのようなレトリックを仕掛けて、潜在意識に植えつけてしまえばこちらのもの。
「俺も考えたことなかったけど、森崎さんみたいな美人だったら、既婚者でもフラフラッと変な気になっちゃうかもしれないっすね」
 この押しにどう応じるかで、可否は分かろうというものだ。
 智美は、ニヤニヤとして何も言わなかった。
 ここで頑として突っぱねる態度を取る人妻は、苦戦するものである。智美の様子はそうではなかった。
(これは、ヤレるな……)
 俺はそのような感触を受け取った。
「ああーっと、長話しちゃったけど、時間、大丈夫ですか? 俺のおかずは決まってるけど、森崎さんも、ご飯の支度とかあるんじゃ?」
 まだ物足りなそうなところで切り上げるのも、一種の焦らしテクニックだ。さじ加減が難しいところだが、このあたりにしておこうと見計らった俺は、楽しい智美との歓談にきりをつけ、素早く伝票を取った。
 誘ったのは俺なのだから──と、勘定は持つ。決して無駄金などではない。この先、ホテル代が必要なときだって全て俺が出すつもりである。それだけの肉の悦びをこちらだって受け取らせて貰うのだから。

 この人妻は、ヤレる。
 手応えを感じ、それから俺は虎視眈々と機会を狙い続けたが、森崎智美はなかなかその機会を与えてくれなかった。
「今度、飲みに行きません?」
 もはや下心を隠すことなく誘いをかける俺に、智美は、
「行きたい行きたい〜。いつにする?」
 と、色よい返事をしてくれるものの、いざ日程をすり合わせる段になると、
「ごめん、やっぱり無理っぽい……」
 蛇の生殺しで、延ばし延ばしにされるのだった。
 智美の夫は自動車関係の会社に勤めているらしく、かなり忙しく立ち回っている人らしい。日々の勤務も不規則で、妻たる智美は振り回され気味だという。
 決まりかけた飲み会の予定も、夫が翌日の出張に備えて早上がりするとのことで、その世話のため行けなくなったとドタキャンになってしまった。
 何だかんだで夫婦仲は悪くないのかもしれない。果たして智美は身体を開いてくれるのか。あまりにも延期が続いたので、俺は次第に不安が募るようになった。


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