亜美-37
それから2週間もしないうちに誠司は、京都に呼び出され、亜美と会った。亜美は今までの2回とは打って変わって、黒いタイツを穿いていた。上は乳房の谷間が覗けるタンクトップで、少女のような雰囲気から小悪魔のような雰囲気に変わっていた。それほど小さくはないし、高いヒールのサンダルを履いているのに、全身黒尽くめの細身は、実際よりもだいぶ小さく見えた。
「珍しい服装ですね。と言ってもお会いしたのはこれで3回目でしかないんですけど」
「ええ。こういう服装は珍しいんです。ちょっと貴方のために雰囲気を変えてみました」
「僕のためですか?」
「ええ。いろいろ趣向を変えていけば、そのうち貴方の好みも分かってくるわ」
「はあ」
「聞こえる?」
「え? 何がですか?」
「鈴の音」
「ああ。さっきからチリチリと聞こえているんですが、何処にも鈴が見えないんで気のせいかと思ってました」
「いやね。気のせいじゃないわ」
「バッグの中ですか?」
「いいえ。今日はチェーンの代わりに鈴を付けてみたの」
「え?」
「小さいけど、タイツだから鈴の形が分からないように、今日はパンティを穿いているのよ」
「はあ。そうですか」
「このタイツ気に入ってくださった?」
「それはまあ、男なら」
「そうかしら」
「それは自分で穴を開けたんですか? それともそういうデザインのものなんですか?」
「これはこういうデザインなの」
「なるほど」
確かにそれがデザインなのだろう。そうでなければあちこちにある穴がほつれてだんだん穴が広がってしまうだろう。しかし穴は綺麗な形に開けてあるのではなくて、破いたかのような形になっているのである。脚の部分だけでなしに全体に穴は散らばっているが、勿論上手い具合に、隠れなければならない部分には穴はない。パンティを穿いていると言ったが、穴の位置から考えて、きわめて小さなものに違いない。
「キスマークはもう消えてしまった?」
「いえ、まだうっすら残ってます」
「あら、私のは今でもくっきりしているわ」
「そうですか、吸い方が強すぎたのかもしれませんね。すいません」
「いいえ。キスマークというのは、タトゥーよりもいいものね」
「そうですか?」
「ええ。だって貴方がその口で付けてくれたんですもの」
「ああ、なるほど。そうですね。僕もこれがだんだん薄くなっていくのが何だか寂しい気がしていました」
「後でまた沢山付けてあげるわ」
「はあ」
「貴方も沢山付けて頂戴ね」
「ええ」
「今日はね、私の家にお連れするのよ」
「はあ。お一人ですか?」
「そうよ」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「誰かに見られると噂になったりしませんか?」
「そんなこと気にしてたら生きていけないわ」
「はあ」