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亜美
【SM 官能小説】

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亜美-38

 亜美の家というのは豪華なマンションの1室であった。これなら人に見られて噂になるということはない。しかしいったいどうしてこんなに豪華なマンション住まいが出来るのだろうか。
 「これはね、私の両親が残してくれた遺産なの」
 「するとご両親はもう」
 「ええ、私は孤児みたいなもの」
 「失礼ですけど、亜美さんはどうやって暮らしていらっしゃるんですか?」
 「私? 遊んで暮らしているの」
 「え?」
 「株で暮らしているの」
 「株? そんな才能がおありだったんですか?」
 「才能なんかないわ。両親の残してくれた株の配当が私の生活費と言う意味」
 「あ、なるほど」
 「恵まれていると思う?」
 「そうですね。でも貧しくとも両親が健在な方が恵まれているんじゃないのかな」
 「貴方って人は素晴らしい人ね」
 「は?」
 「今までそんなこと言った人はいないのよ。みんな羨ましいと言うだけで。でも、私は貧しくても両親のいる人の方がずっと恵まれていると思っているの」
 「そうですね」
 「貴方のご両親はまだご健在なんでしょう?」
 「ええ」
 「ご兄弟は?」
 「僕のですか? 兄が一人いて、両親と一緒に住んでいます。もう結婚して子供もいますけど」
 「貴方は?」
 「僕はまだ独身です」
 「なぜ結婚しないの?」
 「特に理由はなくて、ただ何となくです」
 「まだ独身を楽しみたいのね」
 「いいえ。特にそういうことではなくて、ただ何となくです」
 「礼子さんとはどうなってるの?」
 「礼子さん?」
 「貴方のオチンチンを握った人よ」
 「あ、赤尾さんのことですか。どうなってるといっても別にどうもなってません」
 「デートはしたことないの?」
 「赤尾さんとですか?」
 「ええ」
 「そんなこと考えたこともありませんよ」
 「本当?」
 「本当です」
 「彼女は貴方に気があるわ、絶対」

 赤尾礼子が誠司に気があるということは、実は最近になって分かった。
 「中田君、今忙しい?」
 「いいえ、特に忙しいことはありません」
 「それじゃちょっと付き合ってくれる?」
 「はい」
 中田は取材の手伝いだと思って、カメラを持って礼子の後を追った。礼子が訪ねた先は、SMの女王として名高い、セシリアだった。20歳のときからSの女王として働いてきたと言うから、既にそのキャリアは20年を超す。つまりセシリアは、現在40歳ちょっとになる訳だが、長い髪と濃いメーキャップにくまどられたその顔は年齢不詳に見えた。しかし話をしてみると意外に気さくなおばさんという感じである。けれども20年を越すSM女王のキャリアは伊達では無い。人に命令を下し、人を意のままに動かすことが習い性になっていて、礼子と誠司はセシリアをインタビューしているというよりも、させられているという感じだった。
 1時間以上に及ぶインタビューが終わり、雑談に移ると、セシリアの手作りだというケーキを出してくれた。誠司は甘いものが苦手なので手を付けずにいると、セシリアが綺麗にマニキュアした指で誠司の頬をつまんだ。


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