亜美-22
男は女を壁際の磔台に後ろ向きに縛り付けた。磔台というのは壁際にX字形に組んだ木が取り付けてあり、その上下4カ所の端に革ベルトが取り付けてあるものである。つまり此処に女は両手を万歳し、両足を大きく開いた形に縛り付けられた。背伸びしたようにちょっと踵を上げた格好で縛り付けられたので、足首や尻がすぼまって格好良く見える。ふっくらと女らしく膨らんだ性器が股間を通して覗いており、垂れているチェーンが光を反射して光る。肛門の皺が良く見るとヒクヒク動いているように見えたが、美人だとこんな所でも美しく見えてしまう。昨日のトドとは偉い違いである。
誠司は男の邪魔にならないように気を付けながらあちこちから写真を撮った。男はムチを取りだして尻にうち下ろした。九尾ムチと言うのだそうで、皮の紐と言うより帯のような物が沢山付いている。要するに皮で出来たハタキのような物である。バシーンと大きな音がして、女がキャヒーンと声を上げた。
このムチはコメディなどで使う張り扇と同様、音ばかり大袈裟に大きくて痛くはないのだと言われているが、実際に打たれたことのある礼子の話によると痛くないことはないとのことだった。当たり所によっては目の奥に稲妻が走る程の激痛を感じることだってあると言うので、何処に当たった時ですかと聞いたら「縄師の奥さんに触ってごらんと言われて、中田君、まっすぐ其処を目がけて指を伸ばしたでしょ」とのことだった。やはりクリトリスに当たると痛いらしい。
それにしても女の叫び声は艶めかしくて、反り返った体の線と言い、ぷるぷる震えるふくらはぎのラインと言いトドとは天地ほどの違いがある。こんな女を好きにしているこの中年の男は一体何者なんだろう。おっとりと品が良さそうな見てくれで、一代で築き上げた中小企業の社長のようには見えない。何処かの老舗の跡取りといった感じである。初めの内は尻を中心にしてムチを打っていたが、その内次第に熱が入ってくると肩から膝裏まで所構わず打ち据えた。ゆっくり間を置きながらムチ打つのだが、腕の振り方や表情で次第に熱が入ってきたことが分かる。女の嬌声も叫び声と言うよりいつしか泣き声のような調子に変わり、厭らしいことこの上無い。聞いているだけで誠司の性器は固く屹立してしまう。礼子に気取られないようなゆったりしたズボンを穿いているのだが、鋭い礼子のことだから見抜いているのだろうなと思うと礼子の方を見ることが出来ない。
女の背面は既に赤く腫れ上がり、痛々しい。もはやぐったりして脚もガクガクしており、縛られていなければ恐らく崩れ落ちていたことだろう。男が手伝ってくれと言うので誠司はカメラを置いて近づいて行った。ベルトを解くから崩れないように体を支えてやってくれと言う。脇に手を回したら乳房に触れたので慌てて少し下に移動して腹の辺りに持ち替えた瞬間女の片手が解き外されて女の体がガクッと傾いた。誠司は遠慮がちに手を回していたので、驚いて体を押しつけるようにして女を抱き止めた。女の全身は水を被ったように大量の汗でヌルヌルとして滑る。
もう一方の手のベルトが外されると女はぐったりと全身の重みを誠司に預けた。滑るので両腕で締め付けるように抱えて支えたが、意外に重くて腰が砕けそうになった。一方の手を下に回して女の尻を支えようとしたが、ぬるぬるで滑ってしまう。仕方なく股間に手を通して内股を支えた。しかしそれは性器の直ぐそばで、そんなところを支えていると思うだけで緊張してしまう。尻と同様ヌルヌルしているのだが、場所柄それは汗だけではないのかもしれないのである。女は完全に失神している。だから誠司に抱きつくということもしないので、これを支えるのは思ったよりずっと大変だった。
男はそれから脚のベルトを解きにかかったが、動きが少しおかしい。見ていると男は腰が悪いようで、屈むのに苦労している。だから脚のベルトがなかなか外せない。見かねて礼子が近づいてきて外してやっている。その間誠司は女の体を支えながら、先に脚のベルトを外すのが手順だろうにと心の中で思った。初めは遠慮がちに抱きとめていたのだが、段々重くなってきてもう手が女の体にめり込むくらいの力を入れてないと抱きとめていられない。ほっそりした見かけによらず重いのは、変な格好で抱きとめているからである。それにしても汗に濡れて光っているこの女の美しいこと。目を瞑って完全に失神している顔はまるで女神のようでさえある。濡れて光っている乳房などは、この世のものとは思えないほど神々しく見えた。
漸く脚のベルトが外れると、誠司はよろよろと半ば引きずるようにして女の体をベッドに運んだ。格好良く抱き上げて運んでやりたかったのだが、相手の協力が無いとそういうのはなかなか簡単には出来ないのである。ベッドに放り投げるみたいに運び上げると勢いで誠司も倒れ込んでしまい、女の胸の辺りに顔が当たってしまった。わざとやったことではないのだが、わざとやったように思われたのではないかと思って慌ててしまった。