ビッツコイン-6
「ところでお兄さんは、どこのお店の客引きなの?」
客引きは少し警戒心を抱きながら答える。
「俺は特にどこって訳じゃなくて…、大豆町の風俗の総合案内人、みたいな。ほら、さっき俺がいたトコが案内所になってて、いつもはそこでお客さんの要望を聞いて店に連れてってやんの。」
「そうなんだ。お金は誰に貰うの?」
「まー、ここいらを取り仕切ってる人から、ね。どうゆー人かは察しがつくでしょ?」
「まぁね。でも今回はそう言う捜査じゃないからこれ以上は聞かないわ。てか、その報酬もビッツコイン??」
「うん。まぁね。換金すると税金引かれるし、城南ではビッツコインが使える店が多いから不自由はしないけどね。」
「そっか…。もしかして風俗で働く女性へのお給料もビッツコインなの?」
「大抵はそうだね。ただ風俗で働く子の多くは借金抱えてるから、よほど生活に困ってない子以外はみんな換金するよね。」
「そうなんだ…。」
城南においてビッツコインはかなりの浸透度を見せている事が分かった。すっかり流通の基盤になりつつある状態にある事に今まで気づかなかった自分をまだまだ未熟だと感じた。
「ついでだからどんなもんか見ていきなよ。」
客引きが女性専用風俗ビルに案内しようとする。
「い、いえ…、そこまでは…」
遠慮するマギーに対して華英は乗り気だった。
「いーじゃん、ついでだから見て行こうよ!」
「え…でも…」
「いいからいいから!お願いしまーす!」
マギーの手を引きビルの中に入って行った。ドキドキしたマギーだが、ビルに入ると喫茶店のような場所だった。ウェイトレスのような女性が席に案内する。中にはたくさんの女性が座っていた。みんな喫茶店に来ているかのような雰囲気であった。
「喫茶店ですか?」
「いや?今に分かるよ。」
客引きがニヤッと笑った。するとウェイトレスが水とおしぼりとメニューを持って来た。
「メニューが決まりましたらタッチパネルを押してお待ち下さい。」
メニューはタブレットを使用していた。マギーと華英が画面を見ると、どうやらこのビルに入る店の名前が並んでいた。
「ここで行きたい店を選ぶんだよ。それぞれにどう言う店かの説明も載ってるし、気に入ったメンズの出勤状況や稼働状況も載ってる。行きたい店決まったら、あのドアからお店に行けるようになってるから、自分がどの店に行くのか他人に知られる事がないんだよ。ここ以外はお客さん同士が顔を合わせる事がないから、周りを気にする必要がないんだよね。そこが女性にウケてるんだ。」
「なるほどね…」
確かにプライバシーが守られ、いい事だと感じた。