ビッツコイン-2
常磐銀行に到着した華英は、現在新設されたと言う仮想通貨課の矢島洋一課長と面談する。
「仮想通貨課とかあるんですね。」
「最近の需要を考えれば専門部署を作らないと業務が間に合わないもんでね。」
「そこまで多くの人が仮想通貨を扱ってるんですか?」
「ええ。それに市役所の方からもビッツコインを普及させるよう指示がありましたので。」
「佐川市長ですか?」
「はい。城南市の商業施設に積極的にビッツコインを扱えるような状況を整えるようお達しがあったようで。当行から仮想通貨に詳しい人間を派遣して良くご説明に上がりましたよ。そのお陰もあってか当行は現在ビッツコインの販売量がダントツで日本一なんですよ?」
「そうなんですか!?」
「ええ。先日ビッツコインが大暴落しましたが、将来性を見込んでか相場の下がった時に買おうとするお客様が大勢いらっしゃいまして、確かに大損した方は多いかもしれませんが、我々には良いビジネスチャンスとなりました。」
「大暴落とまでは行かなくても、相場がガクッと下がる時って結構あるんですか?」
「ありますね。まぁ少し悪い噂が広がればすぐに下がりますし、明るいニュースがあれば一気に上がりますからね。相場を見てると皆さん買いと売りが御上手のように感じますよ。それもきっと大儲けしようとする人よりも、1万儲かればいいかなと、少額の利益でご満足するお客様が多いからかと。その堅実さはきっと世間で言われているOLさんを中心にした若い女性のお客様が多い事を表しているのではないですかね。」
「なるほど。」
「ただ、いますよ?中には。多額のお取引をされてるお客様も。何千万単位で換金される方も。そして破滅して行く人も良く見かけます。毎日のように訪れていた方がピタッと来なくなり、暫くして訪れる時はもう資産を手放さなければならない状況になっている場合が多いですね。そう言う方も過去に何人も見て来ました。ビッツコインで賢いのはやはりお小遣い稼ぎレベルのお取引をされている方だと思います。いつでも等身大の自分でいる事が大切なんです。いきなり大金を手に入れて舞い上がった、いわゆる成金程地獄を見ると言う事です。」
「かも知れませんねぇ…。分かりました。ありがとうございます。」
そう言って話を聞き終えた華英は、最後にこう言った。
「ところで、私にもビッツコインでお小遣い稼ぎ、できますかねぇ…?エヘッ」
と。