樹理-25
「ネ? 動かしてもいい?」
「何を?」
「腰を」
「そんなこといちいち聞くなよ。セックスなんてお互い好きに動けばいいんだ」
「そう? 何だかあんまり幸せだと怖くて」
「何が?」
「幸せって鳥みたいに直ぐ逃げて行きそうで」
「僕は鳥じゃないさ」
「愛してるわ」
「分かったから腰を動かせよ。そのままじっとしてると寝ちゃうぞ」
「うん。寝てもいいよ」
「そんなにあちこちキスしたら寝られない」
「だってじっとしてられないんだもの」
「さっきから腰はじっとしてるぞ」
「あ、そうだった。腰も動かさないとね」
「うん、そうそう。気持ちいい」
「明日からバイブ入れようか?」
「何処に?」
「膣に」
「何で?」
「そうすれば貴方も喜ぶし、子宮後屈も治るかも知れないでしょ?」
「馬鹿、そんなのはどうでもいいんだ。治療と遊びは別だ」
「それじゃ便秘の治療も浣腸なんかしない方がいいのかな」
「いや、それは厳粛な治療行為なのである。浣腸は薬屋で売っているんだし」
「そんなこと言って。私便秘でも浣腸なんかしたこと無いのに」
「そうか。これからしょっちゅうしてやる」
「厭だなあ。浣腸しても出す所見ないんならいいけど」
「馬鹿。それが見たくて浣腸するんだ」
「変な趣味ねえ」
「参ったか」
「何それは? 私は前から貴方に参ってるのよ」
「そうだった」
「治療しても子供が出来なかったらどうしよう?」
「子供なんかいらない。子供が出来たら縛ってセックスする訳にもいかなくなる」
「そうね。それはそうね」
「だから子供のことは心配するな」
「それじゃバイブなんか入れなくてもいいのね」
「いや、それは純然たる遊びとしてそういうこともしなければいけない」
「何?」
「要するにやりたいことはやるんだ」
「それで私のこと好きなようにして変な女に変えてから捨てたりしないでよ」
「ゴミじゃないから捨てはしない」
「それじゃ好きなことしていいわ。貴方がやりたいことはやられることにする」
「そうだ。それでいい」
「明日ロープと浣腸と、何だっけ?」
「ローソクとバイブ」
「そうだった。ロープと浣腸とローソクとバイブを買ってくるから」
「ローソクも大人のおもちゃ屋で買うんだぞ。ちゃんとした店で買ったりすると大変だぞ」
「どうして?」
「普通のローソクは高い温度で溶けるから、それを垂らしたりするとヤケドする。SM用のローソクは低い温度で溶けるようになってるから垂らしても余り熱くないんだ」
「そうなの? いろいろあるのねえ」
「そうさ。浣腸だって中に入れる薬液は薬屋でしか売ってないけど、器具は大人のおもちゃ屋で売ってるんだ。薬屋でも売ってるけどそんな所で買うのは恥ずかしいだろ?」
「そんなの何処で買っても恥ずかしい」
「まあそうだけど、薬屋で売ってる奴は駄目なんだ。小さくて面白くない」
「いろいろ良く知ってるのね」
「ああ、樹理の為にいろいろ研究しておいた」
「何言ってるの。幸せなんだけど、大変な人と結婚するんだなあって感じがしてきた」
「厭ならやめてもいいぞ」
「厭じゃない。やめないで。今更狡い」