新たなる手口-9
「警察も仮想通貨については対応も知識も後手後手にまわってるし、お金の流れを追う過程でどうしても煙に巻かれてしまうのよね。」
「あくまで仮想通貨だからな。空の上を飛んでるようなもんだ。紙幣番号的な物もないから足がつかないしな。」
「はい。確かに仮想通貨は便利なのかも知れないけど、そこに目をつけるあたりが厄介な犯人な事が伺えますよね。」
「ああ。犯罪者と言うよりは頭のいい奴なんだろうな。だから意外と普通の有名大学に通う学生でも犯人である可能性は高いって事だ。いや、高校生でも、中学生でも、な。」
「ですね。」
今の時点でビッツコイン絡みで被害者を多く出している元凶である犯人の目星は全くつかなかった。
「ビッツコインと薬物の繋がりが見えたって事は、もしかして佐川明子や小渕愛子もビッツコインに絡んでる可能性はあるわね。取り調べする必要があるわね。帰ったら事情聴取するから段取り取っておいて。」
「うん、分かった。」
華英は県警本部に指示をして段取りを組ませた。
「まーた繋がってんじゃないのか?若ちゃんの事件から…」
「かも知れませんね。湯島武史の亡霊はまだそこら辺をうろついているのかも知れませんね。」
「負けんなよ?いや、死ぬなよ?」
「はい。」
最後は神妙な顔つきで顔を合わせ酷龍会を後にした。
入口の門まで若頭の湯田が見送ってくれた。
「湯田さん、今度再戦しましょうね!今度は負けませんから!」
「フフ、ヤダよ、もう。ようやく骨がくっついたとこなんだから。」
「本気でやらないからじゃないですか!骨折った後の湯田さん、別人のように強かったし。」
「やらなきゃこっちが殺されると思ったからね。」
「じゃあ今度は初めから殺しに来て下さいね?」
湯田は苦笑した。
「その気になったら、ね。」
「その気にさせてあげますぅ??」
「フフ、そんなキャラじゃないだろ。」
「ハハッ、ですね!じゃ、また!」
「ああ。」
窓を閉めると華英が車を出した。
「彼となんかやったんですか?」
「ん?いやね、前に権田さんにね、俺に認めて欲しかったら組員全員を倒してみろって言われて戦った事があるのよ。でも湯田さんだけには勝てなかったの。いいとこまで行ったんだけど、最後私殴られて気絶しちゃってさぁ。」
「何人と戦ったんですか?」
「30人。」
「さ、30人!?じゃあ29人には勝ったんですか??」
「うん。でも負けたから認めてくれないって思ったんだけど認めてくれたの。それ以来仲良くさせて貰ってるわ?」
「マジ…?」
「うん。あんたの場合はきっと30人とヤッたら認めて貰えるかもね!」
「うーん、喧嘩よりもそっちの方が自信あるかなー♪」
「そんなに上手そうには見えないけど〜??」
「何よ〜っ!」
「何よっ!!」
2人はまたまた口喧嘩をしながら県警本部に戻ったのであった。