アンジェラ-25
「カレーなんか食べられなくなっちゃうな」
「そうよ。だから私カレーは大嫌い。変なこと思い出してしまうの」
「偉い仕事だな」
「おしっこだって人の口に出すっていうのはなかなか難しいのよ。出そうで出ないもんなんだから」
「そうだろうな」
「でもおしっこはまだそんなに気持ち悪いとは思わないから、これは大抵のお客にやるわね。厭がっていても口を開けなさいって言うとちゃんと大きな口を開けて待っているわ」
「それで飲むのか?」
「情けない顔して口に溜めてる人もいるけど、飲みなさいって言うと飲むわね。飲まなかった人は今までにいない」
「へえー」
「気持ち悪いけど、ちょっと飲んでみたい気もするんじゃないかしら。だから飲みなさいと言われるときっかけを与えられたって言うか、思わず飲んじゃうのね」
「そんなもんなのか」
「ヤスシも飲んでみたい?」
「飲んでみたくない」
「そうか。結構まともなのね」
「だって僕はSだもん」
「それじゃ私におしっこ飲ませたいと思う方?」
「うーん。それは思わないなあ。汚くてその後キス出来ないじゃないか」
「良かった」
「ムチで打ってくれっていうお客もいるんだろ?」
「それはいるわ、勿論」
「本当に力入れて打つの?」
「最初は軽く打つの。本当にMなのかちょっと経験してみたいだけなのか分からないから。でもお店のムチは強く打ってもそんなに痛くは無いのよ、音ばかり派手で」
「そうなのか」
「だから本格的な人は自分でムチを持参して来るわ。これで打ってくれって」
「ほー、それは本格派だな」
「そういう人は本当に血が出るくらい強く打たないと満足しないのよ」
「へー、恐ろしい」
「恐ろしいのはこっちよ。思い切り打ってる内に本気になってしまったりしてハッとすることがあるもの」
「本気になってムチで打つのか」
「だって、もっと強くもっと強くって催促されるんだもの。終いには肉体労働でもしたみたいにハアハア粗い息になっちゃうわ。疲れもするし」
「そうか、Sの女王っていうのも結構大変なんだな」
「そうよ、仕事だから楽なもんじゃないの」
「仕事でなけりゃ楽しいのか」
「仕事でなけりゃ私はそんなことしたいとは思わないの」
「そうか。良かった」
「でもヤスシが何か悪い事したらムチで打つわよ。あんまり音はしないけど物凄く痛いというムチを持ってるから」
「ゲッ。そんな乱暴なことするなよ」
「だから悪いことしなければいいのよ」
「いや、悪いこととは知らなくてやるってこともあるだろ? だから言葉で注意してくれればいいんだ、ムチなんか持ち出さなくても」
「そうね。言っても分からない時にムチで打てばいいのよね」
「いや、その、どんな場合でもムチは良くないと思うよ」
「そんなことない。愛のムチって言うじゃない」
「それは単なる喩えだと思うよ。本当にムチで打つ夫婦なんかいないだろう」
「此処にいるわ」
「あーあ。凄い美人と一緒になったと思ったら、やっぱり綺麗なバラにはトゲがあるんだな」