アンジェラ-23
翌日は昼頃から2人で外出した。アンジェラは黒いラテックスのワンピースを着ている。短くて股すれすれの長さしかない。体に密着してラテックス特有の質感と光があり、遠くからでも非常に目立つ。黒いから目立たないものの、ノーブラの乳首は良く見るとなるほど透けていた。しかし透けていることよりもその服を着たアンジェラが放つ全体の雰囲気はオーラに包まれた宇宙人のようであり、圧倒的だった。これに高いヒールの靴を履いているから靖よりも遙かに背が高くなっているが、靖の片腕を両手でしっかり握って歩いている。アンジェラの顔と姿は普通の服を着ていても目立つのにそんな服を着ているのだから目立つなどというものではない。皆が振り返って見ると言うよりもポカンと口を開けて見送っているという感じになる。靖は鼻が高かった。人に注目などされたことのない平凡な男が急に世間の注目の的になったような気がした。注目されているのはアンジェラなのだが、靖の気持ちは既にアンジェラと自分が一体の物となってしまっていたのである。時々服の上からアンジェラの乳房に触ったりするが、ラテックスの肌触りは気持ちがいいのか気持ち悪いのか良く分からなかった。アンジェラは人前で靖がそんなことをしても全然厭な顔をせずに、やりたいようにやらせている。しかし家具売場でタンスの下の抽出を開けようとして腰をかがめたアンジェラの股間を靖が覗き込もうとした時には流石に黙っていなかった。
「そんな恥ずかしいことをするんじゃないの。見たければうちに帰ってからいくらでも見れるでしょ?」
「はい」
「私よりヤスシが恥ずかしいでしょ? そう思わないの?」
「はい」
「お店の人が笑っているよ」
「へいへい」
「へいへいじゃないの」
「はい」
「この抽出開けて頂戴」
「これ?」
靖が屈んで開けようとしたらアンジェラが靖の股の間に手を通し、ズボンの上から靖の股間を掴んだ。
「ギェー」
と言って靖は仰け反った。
「大袈裟ねえ。立ってるのかどうか確かめただけじゃないの」
「そんな恥ずかしいことするなよ。やりたければうちに帰ってからいくらでもやれるだろ? 大体僕よりもアンジェラの方が恥ずかしいと思わないのか。店の人が見て笑ってるじゃないか」
「人の言ったこと全部真似するんじゃないの。ちょっと悪戯してみただけよ。チンポおっ立てて怒っても似合わないよ」
「怒ってないよ。怒ってるのはチンポだけ」
「それじゃ早く買って帰ろう」
「いや、もっとアンジェラと歩きたい。嬉しいんだ。皆が見るから」
「そう。それじゃタンス買ったらあちこちぶらぶらしようか」
「うん」
2人は新宿の雑踏をあちこちぶらついてから喫茶店に入った。近頃は奇妙な風体の若者が多くて身なりだけで人目を引くことは少ないが、アンジェラの姿には誰もが目をまるくして視線を集中させた。中には遠巻きに追いかけてくる者もいる。しかしアンジェラは縦も横も大きな、言って見ればアマゾネスのような体をしているし、顔は美人に違いないが如何にもきつそうな顔立ちだから傍に寄ってからかおうとする者はいなかった。
「アンジェラはロング・ドレスを着たら貴婦人みたいに見えるな、きっと」
「これを着ているとどんな風に見える?」
「それだとやっぱりSM風に見えるな」
「それでヤスシは恥ずかしく無いの?」
「別に恥ずかしくないな。アンジェラが綺麗に見えるならどんな服装でもいい」
「そう。そう言ってくれると嬉しいな」
「でもアンジェラは美人だからどんな服装でも綺麗に見えるね」
「でも裸だと1番綺麗だって言うんでしょ?」
「うん。それはもう裸が1番」
「私の体が好き?」
「うん。大好き」