アンジェラ-18
「驚いた」
「そう、そういう風に喋るの」
「あのさあ。僕のこと好きになったんだったらさあ・・・」
「何?」
「別に国に帰る必要は無いんじゃないの?」
「どうして? 結婚でもしてくれるって言うの?」
「グヘッ。結婚?」
「私と結婚してくれるの? それとも愛人になれって言うの? 国に帰るなっていうのはどういう意味なの?」
「外人と結婚するなんて子供の時からの夢だったなあ」
「それじゃ結婚してくれるの? 私は外人だよ、コロンビアに帰れば外人じゃないけど」
「当たり前だよ、それは」
「そうだった。私の脳味噌も溶けて来ちゃったみたい、貴方と付き合ってたら」
「何だよそれは、酷いこと言うなあ」
「子供の時からの夢は実現しないといけないわ」
「でもどうして僕のことが好きになったの? 僕の子供作りたいなんていう程」
「それが分からない」
「分からない?」
「ちっともハンサムじゃないしねえ」
「そうさ。自慢じゃ無いけど日本人の女にも持てないんだ」
「そんなこと全然自慢にならない」
「だから自慢じゃ無いけどって言っただろ」
「本当に分からないの。ヒヒ爺でもいいから金持ちの男と結婚したかったのに」
「あのね。金のことなら自慢じゃ無いけど、いや、自慢するんだけど、僕はちょっとした金持ちなんだよ」
「本当? いくら持ってるの?」
「600万円くらいあるよ。いや、最近アンジェラと会うようになって使ったから500万くらいになっちゃったかな」
「たったそれだけ」
「え? たったそれだけって言っても500万って言ったら大きいよ。コツコツ貯めたって何年かかると思う? 毎月5万円貯金したって8年くらいかかるんだよ」
「それくらい分かるわ。それで8年かかって貯めたの?」
「いや、だから遺産でマンション買った残り」
「だろうと思った。コツコツ貯めたりすることの出来る男じゃないものね」
「うん。・・・何? 馬鹿にしてるの?」
「ちょっとね」
「500万だってコロンビアに持っていけば大きいだろう? 日本の10億円くらいになるんじゃないの?」
「馬鹿にするんじゃないの。そんなに大きくは無い。第1私の方がお金持ちよ」
「へー? いくら持ってるの?」
「大きな3階建ての家と現金で1000万円以上持ってる」
「ウヒャー、凄い。どうしたの?」
「遺産じゃないわよ。コツコツ稼いで貯めたのよ、この体で」
「ヒョー。女は凄いなあ」
「まあ、2人で足せば1500万円にはなるわね」
「それで山分けするの?」
「馬鹿あ。何で山分けするのよ。分けるんなら初めから足さなきゃいいんでしょ、馬鹿」
「それもそうだな」
「1000万円あればちょっとした店を開けると思うの」
「ちょっとした店って?」
「少し広い店を借りてSMショーをやるスナックを開きたいの」
「SMショー? 女を縛ってムチ打つとかそんな奴?」
「そう。それに男がMなら私がSになってショーをやるの」
「へー。それで変態相手にガッポリ稼ごうというのか」
「ううん。沢山稼がなくてもいいの。会員制にして入会金は取るけど、それでレミーマルタンか何かボトル無料にするの。だから入会金は3万円くらいかな。会員が次にボトルキープする時は1万5000円くらいにして」
「それで飲み代はどれくらい?」
「1時間7000円くらいにしたいけど、どうかな」
「高いなあ」
「それじゃ6000円くらいかしら」
「女は?」
「女のお客さんは半額でいい。SでもMでも女は入会金も飲み代もうんと安くする。女が来れば男も集まるから」
「そうじゃなくて店のホステスだよ。Mのホステスもいなきゃいけないだろ?」
「それは無し」
「無し? それじゃお客は全部Mか?」