人-6
俺たちは兄貴に試されたんだ。
これぐらいでくっつかないようじゃ、ナツを任せられないな。
笑っている兄貴の顔が浮かぶ。
笑ってくれるのか。
俺は泣きそうだけどな。
俺が兄貴の年齢を追い越したって、例え由布子さんが俺と結婚してくれたって
一生兄貴には敵わないよ。
でもさ、俺だって兄貴に負けないぐらい由布子さんを愛してるんだ。
分かってるよ。そう笑う兄貴がいるような気がする。
兄貴に勝てる事があるとするならば
由布子さんの隣に10年以上一緒に居ることだ。
死ぬまで彼女と一緒に居るよ。
頼むよ。そう笑っている気がする。
そっと由布子さんの髪を撫でれば
その顔を俺の肩にすりつけた。
幸せにしてやってくれ―――
どこまでも、いい男だな。
「するいな。兄貴は」
その声に、由布子さんが目を覚ました。
「ん?何?」