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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-6

 「姉さんはいつでもいいって」
 「わあ、本当? それは楽しみね」
 「田宮浮かれてるなぁ」
 「だって素敵なお姉さんだったじゃない」
 「何の為に姉さん連れて来いって言ったと思う?」
 「何の為に?」
 「あんたの弟さんをうちの娘に近づかせないでくれって言う為に呼んだんだよ」
 「え?」
 「それ以外に考えられないって言ってた」
 「厭だ、それは考えすぎよ」
 「そうならいいけど、何か厭な予感がするな」
 「何で? 私が誰と付き合おうと口出しするようなお父さんじゃないわ」
 「でも、どうせ付き合うならもっと頭のいい男にしなさいとか言うんじゃないのかな?」
 「あのね、中庸の法則って知ってる?」
 「中庸の法則? 知らないな、それ何?」
 「頭のいい男女が結婚すると頭のいい子が産まれるんだけど、それを何代も繰り返してると逆に今度は少しづつ頭の悪い子が生まれてくるの。そういう遺伝の法則」
 「それは知らないなあ。生物は受験に関係無いから勉強してないんだ」
 「うん。でも、そういう法則があるから私は頭のいい男の子と結婚すると却って馬鹿な子が出来る可能性が強いのよ」
 「すると僕みたいな馬鹿が丁度いいっていう訳?」
 「そう。だから安心して」
 「うーん」
 「それじゃお父さんと日取りを打ち合わせてまた知らせるね」
 「うーん」
 「どうしたの?」
 「うーん」
 「何考えてるの?」
 「あのさ。今の中庸の法則だけど、あれってもしかすると僕と結婚すること考えて言ったの?」
 「そういうことも視野に入れて言ったということかな」
 「視野に入れて?」
 「そう」
 「それって、どの程度具体性があるっていうことなのかな」
 「具体性と言うより可能性かな。それもポシビリティよりプロバビリティの方が近いかな」
 「ん? そんな突然横文字出されても分からないよ」
 「分からなくていいわ」


 「あのさ。ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
 「まあ珍しい。小山君が一体何ですか?」
 「うん。室野、クラスで1番英語が出来るだろ?」
 「そうでも無いけど何? 小山君英語の出ない大学受けるんじゃ無かったの?」
 「うん。受験とは関係無いんだけど、教えて欲しいんだ」
 「何?」
 「ポシビリティとプロビリティってどういう意味なんだ?」
 「ポシビリティは可能性だけど、プロビリティって何だろう。知らないな」
 「室野も知らないのか」
 「小山君、それプロバビリティなんじゃないの?」
 「あ、そうだ、プロバビリティでしょ? それなら分かる」
 「うーん。そうだったかも知れない。それだとどういう意味?」
 「それも可能性という意味だよ」
 「ちょっと芳恵。此処は私に任せなさい。小山君と話すのは私の方が上手いから。ね、小山君、単語だけポツンと持ち出して意味を聞いても分からないよ。だってどういう文脈でその言葉が使われたのか分からないと正確な意味も説明出来ないよ」
 「本当か?」
 「そうよ。日本語だってそうでしょ? 朝って言ったって昼頃まで含むこともあるし、6時から8時くらいまでに限ることもあるし、朝の3時という場合は午前というのと同じ意味に使われている訳でしょ? だから言葉の意味を聞く時はどういう状況で使われたのか前後の言葉も説明してくれないと駄目よ」
 「そうか。それじゃある人があることを視野に入れていると言ったとするだろ? で、視野に入れてるってどういう意味なんだって聞いたら、そういう可能性もあるかな、それもポシビリティじゃなくてプロビリティかなって言うんだ」


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