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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-20

 「木原、日本語分からないの?」
 「好きな女って誰のこと?」
 「誰でも」
 「誰でも好きなの?」
 「違う」
 「小山君の日本語って分からないよ」
 「分からなくていい」
 「裕子、通訳して」
 「例え好きな女の子であっても、その子の服を着る趣味は無いって言ったのよ。ネッ、そうでしょう?」
 「ほら大和田さんはちゃんと理解しているじゃないか」
 「付き合いが長いと分かるようになるのかな」
 「裕子は特別よ」
 「僕の言うこと分からないのがおかしい」
 「ねえ、小山君ナルト食べ無いの?」
 「うん」
 「それじゃ私に頂戴」
 「いいよ。こんなの好きなの?」
 「うん、ナルトって何から出来てるか知ってる?」
 「知らない」
 「魚のすり身なんだよ」
 「だから不味いんだ」
 「だから体にいいんだよ」
 「体に良くても不味い」
 「子供は何でも食べないといけないの」
 「木原はまだ子供だったのか」
 「小山君のこと言ってるの」
 「何で僕が子供なんだ?」
 「だっていつもお母さんと一緒じゃない」
 「何処に?」
 「そこに」
 「これは母さんじゃない。大和田さんだ」
 「そうだったのかぁ・・・って言う訳無いじゃん。裕子の顔と名前くらい知ってるよ」
 「なら変なこと言うな」
 「木原さん駄目よ」
 「はい、お母さん」
 「僕の母さんじゃなくて木原の母さんなんじゃないか」
 「芳恵、この子は駄目だ。冗談が通じない」
 「僕はこの子じゃない」
 「じゃ、この方」
 「それならいい」
 「この方は冗談が通じないよ」
 「木原の冗談が下手なんだ」
 「まあ、私にそんな冷たい言い方する男性はこの方だけだわ」
 「木原さん、いい加減にしなさい。小山君も気にしないのよ」
 「うん、室野の友達だから」
 「あら、小山君いつから芳恵の友達になったの」
 「僕じゃない。木原が室野の友達なんだ」
 「え? 私が芳恵の友達だから何?」
 「類は友を呼ぶんだ」
 「ああ、そういう意味か」
 「木原は日本語が苦手なのか?」
 「小山君の日本語がちょっと苦手みたい」
 「僕の日本語は日本語じゃないか」
 「小山君の日本語は英語だなんて言ってないよ」
 「当たり前だ」
 「当たり前だ」
 「小山君明日お姉さん来るんだって?」
 「何で知ってる?」
 「粕谷君に聞いた」
 「あ、そうか」
 「紹介して」
 「え?」
 「お姉さん私に紹介して」
 「僕の姉さんは女だぞ」
 「えーっ、小山君の姉さんって男じゃ無かったの?」
 「馬鹿」
 「馬鹿はそっちでしょ。姉さんが男だったら兄さんになっちゃうよ」
 「変なこと言うな」
 「男じゃ無くても紹介して欲しいのかって言ってるのよ」
 「なるほど、そうか。裕子は小山君の専属通訳だね」
 「木原の通訳なんだ」
 「女でもいいから紹介して」
 「女に決まってる」
 「だから小山君の女の姉さん紹介して」
 「自分で紹介しろ」
 「自己紹介?」
 「そうだ」
 「それにしても何かきっかけ作ってくれなきゃ自己紹介出来ないじゃん」
 「何で僕の姉さんに興味があるんだ?」
 「だって机並べて勉強してる小山君のお姉さんじゃない」
 「机なんか並べて無い。別の部屋だ」
 「え? 厭だ、私と小山君がだよ」
 「全然離れてるじゃないか」
 「一緒に学んだ仲だっていう意味」
 「それなら初めからそう言え」
 「小山君と話すのは熟練を要するね。段々慣れてきたけど」
 「慣れなくていい」
 「裕子は小山君と話してて困難を感じない?」
 「うん、別にそういうこと無いわよ」
 「ほら見ろ」
 「慣れって恐ろしい」


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