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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-15

 「化粧は?」
 「今日は衣装あわせだからお化粧はしなくていいの」
 「そうか」
 良介が恥ずかしがるので打ち掛けを良介に被せて2人は教室に戻った。良介は皆の反応を思うと憂鬱だったが、教室には珍妙な格好の生徒が大勢いてあちこち笑いの渦が湧き起こっており、裕子と良介のコンビも特別目立ちはしなかった。口々に冷やかし合う声は飛び交ったが口の悪い室野芳恵と粕谷マサルは彼ら自身が珍妙な格好で笑いの対象になっていたし、裕子が睨み付けて2人が近づいてくるのを妨げていた。乱暴な口を利いたことの無い裕子だがきかん気の妹・弟の扱いには慣れているから睨み付ける態度も慣れていてマサルと芳恵も近づいては来なかった。良介は白いタイツに裕子のブルマを履いていたのだが結局たいしたことも無く衣装あわせは終わった。

 文化祭の後の約束をしたせいか田宮順子と良介・裕子の3人はなんとなく親密なグループになってきて、衣装合わせの後も3人でラーメンを食べに行った。

 「小山君ブルマが似合っていたよ」
 「あれは間に合わなかったから代用品なんだ」
 「記念に貰っておいたら」
 「要らない」
 「良かったら私のも上げるよ」
 「要らない」
 「田宮さんのブルマなら欲しがる男子が大勢いるでしょう?」
 「制服をくれっていう子がいるのよ」
 「女の制服なんか貰ってどうするんだ?」
 「さあ、着るんじゃない?」
 「女の制服を?」
 「卒業の時小山君の学生服私に頂戴よ。私の制服と取り替えっこしよう」
 「僕の学生服どうするんだ?」
 「部屋に飾っておく」
 「親に叱られないのか」
 「どうして? くれるの?」
 「上げないけど僕が学生服部屋に掛けておくと母さんがうるさいんだ。ちゃんとタンスに入れろって」
 「ああ、そういう意味か」
 「でも何か記念になる物を交換しておきたいね」
 「そうよね」
 「何を?」
 「何がいいんだろ」
 「小山君水泳部のジャージがあるじゃない。あれを私欲しいな」
 「駄目だ。そんな物どうするんだ?」
 「飾ったり、着たり」
 「田宮、男の服着たいの?」
 「小山君そういう趣味全然無いの?」
 「あるに決まってるだろ。男の服しか着たこと無い」
 「そうじゃなくて好きな人の服を着てみたいっていう意味よ。好きな男のワイシャツをパジャマの代わりに着たりする人いるのよ」
 「女で?」
 「そう」
 「それでどうするの?」
 「それでどうするってパジャマの代わりだから、それを着て寝るだけよ」
 「ふーん」
 「ね、3人でそれぞれ何か交換しようよ。ちょっとした物でいいから」
 「ちょっとした物って?」
 「何でも。ノートでもいいし何でも」
 「交換してどうすんの?」
 「記念に取っておくの」
 「ふーん」
 「卒業するまでに考えておこう」
 「ふーん」
 「何時まで感心してんの?」
 「記念だったらカラオケに行った時に写真撮ればいいんじゃないか?」
 「あ、そうね。それにしよう」
 「それで裏に3人で何か寄せ書きしよう」
 「寄せ書きって?」
 「何でもいいから3人が何か書いて署名するの」
 「ふーん」
 「写真はいいね。思い出になるね」
 「僕はカメラ持って無い」
 「私も」
 「田宮は?」
 「うちにあると思う」
 「それじゃ持って来れる?」
 「うん、駄目なら誰かに借りるから」

 良介はその日家に帰って夕飯を食べてから恵子の部屋に行った。


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