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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-14

 「これ何?」
 「だからお小姓の衣装」
 「これは?」
 「下にそれを穿くの」
 「これブルマじゃないの?」
 「うん、今毎日帰ってから縫ってるんだけどまだ間に合わないから今日はそれでちょっと代用にさせて貰おうと思って」
 「僕がこれ穿くの?」
 「うん、分かってるけど我慢して。誰かが冷やかしたら私がどうにかして上げるから」
 「どうにかって?」
 「その子を教室の外に出してしまうとか」
 「そんなこと言ったってみんなが言ったらどうする? 僕達だけになっちゃうじゃないか」
 「大丈夫。私がそういうことにはさせないから」

 良介は泣きそうな顔をしていたが、裕子は実は粕谷マサルと室野芳恵に予め言い含めて絶対に野次ったり冷やかしたりしないようにと頼んであった。女のブルマなんて穿けば冷やかす奴がいるに決まっているが、そんなことを真っ先に言いそうな者は粕谷マサルと室野芳恵しかいないのである。

 「これは何?」
 「それはタイツ」
 「お姫様がタイツ?」
 「小山君に穿いて貰うの」
 「どうして?」
 「だって小山君真っ黒に日焼けしてるんだもの」
 「日焼けしてるといけないのか?」
 「だってお小姓でしょ?」
 「お小姓だって日焼けしてる人もいるんじゃないか」
 「お小姓はお姫様と同じでいつもお城の中にいるのよ」
 「だから?」
 「だから日焼けする筈が無いと思うの」
 「そうか」
 「ね? これは一種の仮装行列なんだから変な格好するのは仕方無いことなのよ」
 「仮装行列か」
 「そう。ドラキュラの格好したりターザンの格好したりするのと同じことなのよ」
 「ドラキュラの方がいいな」
 「お姫様とドラキュラ?」
 「このタイツ小さいから僕には穿けない」

 良介は痩せてはいるが背は粕谷マサルより幾分大きい。尤も粕谷はがっちりした体型だから大きく見える。

 「大丈夫よ。伸びるから」
 「それにしたって小さすぎる」
 「粕谷君だって楽々穿けるよ」
 「あいつが穿いたの?」
 「そうじゃないけど」
 「じゃどうして分かる?」
 「小山君、ちょっと美術室に行こう」
 「なんで?」
 「それ着て見せて欲しいの」
 「ああ」

 「ちよっと服を脱いでみて」
 「・・・」
 「ズボンも」
 「パンツになるの?」
 「うん、ちょっとこれ穿いてみて」

 裕子は弟の世話をいつも焼いているし、良介はいつも女に囲まれて世話を焼かれながら暮らしているので2人とも良介が下着姿になることを特別意識しなかった。

 「あら、いいわあ。これで鬘被ればお小姓に見えるわ」
 「これおかしく無いか?」
 「おかしく無いよ。全然」
 「なんだか西洋の騎士みたいに見えないか?」
 「それは鬘かぶってないからよ」
 「こんなの穿いたら草鞋履けないよ」
 「あ、そうか。でも足袋を履くから大丈夫よ」
 「どうやって?」
 「大丈夫。タイツは伸びるから。ほら」
 「指が痛い」
 「少し経てば慣れてくると思うけど」
 「ちょっと草鞋履いてみようか」
 「うん」
 「西洋の騎士が草鞋履いてるみたいに見えない?」
 「別に見えないよ」
 「大和田さんの衣装は?」
 「私も着てみようか」
 「うん」

 裕子はセーラー服の上から着物をはおり、後ろを向いて上手にセーラー服を脱いだ。着物の前を合わせながら良介の方を振り返って
 「どう?」
 と言った。


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