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僕は14角形
【ショタ 官能小説】

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僕は14角形-6



 結局、キューティーなフリルさんは「草冠いちご」と名のり、初等部からずっと美術部で公募展の常連。長身短髪少女も初等部からで、ずばりバスケット部で「綿星国子」と名のった。(そういえば最後に名前を呼ばれたな)長身の銀縁眼鏡は読書三昧の「吉田秋生」。間違いなく生徒会長になるだろう。いや違った。この学園では生徒と教師は対等なので、「生徒」という付属的な意味合いを嫌い「自治会」としているらしい。意味解らないけど。
 その後これと
いった授業もなく、だいぶ傾いた陽射しを後に、学校とはす向かいになるという寮へ向かった。しかし、校門近くに色鮮やかな鯉のぼりの緋鯉が立ち尽くしていた。サーモンピンクの淡い髪の毛が春の微風に揺れている。まだ5月には時間があるのだが。原子炉出力最大。

「ばんわ。編入生、じゃなかった。天羽詩音君。学校じゃ君の話で持ちきりよ」

「あんまり持ちきって欲しくないんすけど」

 紅色長髪日本人形少女がため息をつく。 服装は奇妙に地味めだ。薄茶色のタイトスカートに焦げ茶色のペイズリー模様。襟の丸いジャケットの下にはやはり焦げ茶色のセーター。しかし、その形は大きく張り出した胸のせいで変形している。

「世の中、嫌みよねえ」

「世界はいつでも不条理です。悔い改めて神様を信じて天国に行きなさいお姫様」

「あらら、よくわかったわね。私は大島姫乃。『姫乃』って呼びなさい」

 ちょっくらメンチ切り。向こうが先に視線を外した。

「命令ですか、それは」

「もちろんよ」この女に躊躇いという言葉は無いらしい。

「そもそもあなたに恋心は発生しないの。私は正真正銘、愛と真実のビアンなの。あんたとは限りなく性癖が異なるのよ」

「ほほう。すると総合的に極めて例外的に思考するとですな。僕が女の子だったらもう最高にときめいちゃって大変と」

 があああああ、と小さな叫びを吐き出す姫乃さん。気持ちがわからんでもないぞ。

「考えただけで躯が疼くわ」眼を閉じて両腕で身体を抱き、身震いする。オペレッタの「でもね、あなたには以後重要な任務が待っているからね」

 びしっと人差し指を突き出して、踵を返す。あくまでもドラマチックな人だ。
 しかし、立ち去って行く「姫乃」の後ろ姿は花びら散る中をまあなんてロマンティックな映画風味でなかなか見物だった。あの胸も女子の手の中で大きく育ったのかな、なんて邪な考えを思いつく。
 同性が好きなのはお互い様って訳か。限りなくプラトニックにつき、お友達になれるかも知れない。限りなく世間が狭くなる一方だけど。とりあえず第一種接近遭遇が終了。戦闘態勢解除。速度半速、方位1-8-1。


 ちょっとこれはないな、との第一印象。寮は学園の「古い部分」の方を踏襲していた。レイ・ブラッドベリの「10月はたそがれの国」そのまんまだ。もちろん夏にはふさふさの毛を生やした毛虫さんで満員状態になるだろう蔦もお約束のように絡まり合っている。
 隙間だらけのステンドグラスをガムテープで塞いだ木製の華奢なドアを開けるとこじんまりとしたフロントのようなサイドテーブルがあり、40歳前後とおぼしきご婦人が絵筆を取っていた。ちらりとこちらを盗み見てまたキャンバスに没頭する。とても「寮母」とかそんな風には見えない。どこから見ても「あーちすと」といった風情だ。
 彼女は一瞬手を止めて僕に振り向いた。

「天羽君ね。話には聞いているわ。203号、これ鍵。何でもあるから使ってね」

 と言って真鍮製の重たそうな鍵をテーブルに置いた。

「我が黎明学園は『自由闊達を持って旨とする』つまり、部屋はあっても掃除洗濯料理に猫の世話まで自分のために、自分で働くの。以上なの」

 僕は鍵を受け取って(拾い上げただけだが)暗い階段を上った。振り返った所にあった100号はあるキャンバスにはデ・クーニングのような暴力的にして爆発的な野獣系の色彩が踊り狂っていた。性格の中身を考えるのは後回しにしよう。

 階段を上り詰めた彼女の描いていたそれとは対照的に203号室は彩度というものをどこかに忘れ物した質素な部屋であった。
 結局、荷物を入れる前にかなりゴージャスな掃除をする。基本、綺麗好きな僕には耐えられない。黴とか汚れは何としても完全は無理無理。それとなく生活できるようになったのは午後10時を超えてしまった。法則通りに「納めるべき物を納めるべき所へ」は、収納があまりにもないので中途で却下。とりあえず必要な物だけ何とか部屋に詰め込んだ。アスカ・ラングレーの気持ちがちょっとわかる。

 でも、iMacだけは大前提なので、それを中心に生活空間を設計してある。わずか17インチにも拘わらず世界一美しいデザイン。しかもOSも滞りなくLeopard。これがあれば、僕は生きてゆける。真っ白な筐体にに「ちゅっ」と口づけ。光は来ていなかったけど、ASDLが走っていたのはちょっとした奇跡。

 寮にも拘わらず、食堂及び食事は無し。ガス台と冷蔵庫、洗濯機は共同。幸運だったのは、お湯が出るシャワーがあること。まあ、僕は料理好きでありますゆえ、問題はないんだけど。一息して、煙草を一本。ああ、全身に染み渡るぜこんちくしょう気分最高れろれろ舌がまいりませんが。


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