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僕は14角形
【ショタ 官能小説】

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僕は14角形-5



 教室は見事に板張り。これも50年ものか。机はいままでに経験がないほど左右に広い。南側の窓は広く陽射しが暖かい。ただし曇り硝子でもないのにしっかり曇っていて、見えるはずの校庭はおぼろげだ。
 校庭の向こう側はこういう学園にはお約束のような時計台。果たして時間は合っているのか信用して良いのかまるで解らないけどとりあえず空は明るく針は2時48分である。

 有り難いことに教室中程窓際は幸運だ。担当教師はオリエンテーションの時のあの眼鏡の中年で長身の男だった。名前はさっき紹介された。あんまりにもなさけなくて嘘くさいぞ「鈴木清」。犯罪者でももう少しまともな偽名を思いつくぞ。でも感じは…そう悪くないかも知れない。ときめいてごめん、僕の心臓。

「──という事で、自己紹介をしよう。もっともそこはこの学校のルールに従ってもらう。どんどん、質問をしてください。僕らの授業と同じようにね。僕以外の教師もそうだけど、随時どんな質問でも受け付ける。さて、始めようか、最初はえーと、変わった名前だね。『天羽詩音』君。君からだ」

 先生は出席簿をぱたんと閉じて、腰に回す。長丁場の予感がばりばりじゃないかね先生じゃあ僕も遠慮しませんやけくそです後悔しないでくださいね。

「天羽詩音です。いま先生は『しおん』と読みましたけど『シオ』です。なにか質問はありますか」立ったまま周りをぐるっと見渡す。じと眼が大量に身体中に貼りついたが気にしない気にしない。

「あのー」小柄な跳ね毛茶髪のキューティーな女の子が跳び上がった。君はおもちゃ箱かねいったい。なんだかフリルが人間着て歩いて居るぞ。

「基本的な質問ですけどお、シオ君は男の子ですか」

「立派に男の子やっています」心の中で後悔が縺れ合う。さっきの女のおかげで髪の毛が割れて顔の造作がバレバレだった。 迂闊なり我が人生。

 かたりと音がすると、黒い影が立ち上がった。食堂で出会った長身短髪少女。

「あの天ぷらしなびてたでしょ」嫌みな含み笑い。

「爬虫類じゃないので玉子の丸呑みはしないもので」

 涼しい。というか寒い。この女の目は。
 よっこらせ、といった物腰で銀縁眼鏡を高い鼻の上に乗せた長身の男が立ち上がった。さぞかしモテるでしょうね。
「おいおい、物事基本からにしようよ。シオ君中学校は何処なんですか?ほら、こんな風に、さ。」肩をすくめるなんてものが本当にあるとは思わなかった。

「……都立大付属です」

 へえ、とかほおとか、周りじゅうから声がする。ホトトギスか君たちは。
「なにか得意なスポーツとか、趣味とか特技があったら教えてください」ああ、お得な旅行パックな僕。29,800円コンパニオン込み。

「どれでもないけど、どれでもある物がひとつ」

「……それはなんですか?」



「セックス……かな?」



 おお、待ちわびた静寂がやってきた。天使が大群で空中を舞っている。神様の門が開く前にカミングアウトな僕。

「他になかったら、次の人どうぞ」

 きりっとした眼鏡男子が眼を光らせる。

「天羽君。ここは一応清潔な学園生活をする場なのであって……」

「はいはい!彼女はぁ、年上? タメ? まっさか年下〜? あ、おばさまキラーとか」

キューティーなハニーが両手で真っ赤な頬を隠して騒ぐ。何かいけない物を見てしまった時、指を開いて顔に貼りつけるタイプだな。

「特定の『男性』はいません」

「男性」に思い切りアクセントをつけて、そのまますとんと僕は着席した。喉に餅が詰まったみたいな「ぐ」という静止。やがて潮騒のように教室がざわめき始める。がやがやがやがやがや。思う存分想像力をかきたてなさい。メインタンク、ネガティブ・ブロー。潜蛇マイナス3度。潜望鏡と対空アンテナ収納。オール・グリーン。


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