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僕は14角形
【ショタ 官能小説】

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僕は14角形-2




 なんで都立大学の附属中学校に通っていた僕が私立で授業料が腐ったサンマからでろんと流れ出しそうに高額な黎明学園高等部に入ることになったかというと、物理的に自然とそうなった。二年前の夏にガンであっという間に死んでしまった母親は僕に兄弟を残さなかったし、父親も一人っ子で両親も死んでいる。親戚づきあいはない。母親に至ってはその出生さえ定かではない。

 加えて賃貸マンション暮らしで父親は大手の商社マン。めでたく四月から転勤の内示を受けたのは一月のこと。慌てて探し回ったところ、少人数だけど寮があってとりあえず「最高学府」までエレベーターなこの黎明学園に白い弓矢がよれよれと刺さったわけだ。父親は今頃エジプトのカイロへ向けてテヘラン上空を飛行中。僕の荷物は学校の寮に向かって輸送中である。

 幸いにして進学校の黎明学園とは言え、僕は特に勉強しなくても成績は良かったし、知能テストで附属小学校始まって以来のスーパーな数字を叩きだしたので、テストもなくしかも特待生扱いとなった。
 ほとんど瞬間的に解散してしまった「家族」という絆を、僕は教科書に出てくる美談みたいには把握できない。昨日見た夢みたいに、なんでもない事だった。

「天羽詩音君」

 呼ばれたので椅子から立ち上がり、教壇に向かった。でもね、先生、僕の名前は「しおん」と読むのではなくて「シオ」と読むのだ間違えないでね覚えてね。「R」のアルファベットの跳ねた部分が異常にしつこく伸びた藍色の学校のマークが印刷された封筒を手渡される。僕の名字の最初は「あ」だから、だいたい物事に「待つ」ということがないのはいいのか悪いのか。「わ」だったりする人は人生で換算するといったいどれくらいの時間を「待つ」に使うのだろうと余計な心配なんかしてみる。

 僕がメインタンクをネガティブブローして潜行蛇を5度下向きに修正している時、最後の名前が呼ばれた。最後は背の高い、痩せた女の子。ボーイッシュな短髪がなかなか似合っている。烏の濡れ羽色っていうのかな、あれは。 僕は女の子に魅力は感じないが、姿形への審美眼は持っているのだ。
「えー、君たちに渡した書類の中から、一枚目にクラス分けが書いてあるから、それで自分の組、担任教師の名前とか確認してください。で、小冊子にしてあるのが学校内の施設の名前と地図と間取り。まあ、迷子になるような大きな学校じゃないから心配はいらないね。」

 分厚い黒縁の眼鏡をかけた40がらみで長身の教師がぱらぱらと書類をめくる。
「我が黎明学園は自由闊達を旨とする教育方針をとっているが、そもそも『自由』というものは勝ち得る物であって、与えられるものではないし、勿論何をやってもいいとかいう意味では断じてない。肝に命ずること。では、自由に食事を取って、好きに学校内を彷徨うなり友達を作るなりして、14時には指定された教室の指定された席に着席していること。以上、解散」

 椅子と衣擦れ、金具や紙の摩擦音、探り合っているのか取り敢えずなのか既に友達モードなのか携帯の電子音と会話がぐちゃぐちゃと音楽室に響く。インド洋に浮上。曳航ソナー感度良し。風力2から3の微風、確認できる機影はなし。


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