る-2
「選んでくれ。『0』か『100』か」
いきなり突き付けられた選択に由布子さんは戸惑ったようで。
当たり前か。
今日は俺のためのお祝いの席になるハズだった。
ただ、それだけのハズだった。
「0は、キツイな・・・」
「じゃぁ、100か?」
そういう俺の顔をじっと見つめる。
「私は博之を忘れられない、よ」
「分かってる」
「でも乗り越えなきゃいけないってことも分かってる」
「そうか」
「信くん、手伝ってくれる?」
「信之」
信くんと言われていた、兄貴の弟じゃなくて
きちんと一人の男として認識してほしかった。
「信之・・・手伝ってくれる?」
俺は目を閉じて息を吐き出した。
この言葉を言ってくれる可能性は、極めて低いと思っていた。
由布子さんが忘れたくないオトコの弟を恋人に選ぶ可能性は低いと思っていた。
俺と兄貴の顔はよく似てる―――
俺にとって大好きな兄貴の顔で
俺にとって大嫌いな自分の顔だ。
「宜しく。由布子さん」
寂しそうに笑う由布子さんの顔が胸に刺さった。