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蛍の想ひ人
【女性向け 官能小説】

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大嫌いな自分の行動への嫌悪感とは裏腹に
由布子さんがほんの少しでも自分を『男』として認めてくれた嬉しさに浮足立った。

自分の良心と引き換えに由布子さんの隣の席を兄貴から奪った。
ずるい自分に吐き気がする。

「この罪悪感、半端ねーな」

自虐的に笑ってみせると
新田は、苦笑いして
「かわいそーなヤツ」とだけ言った。

「加賀くーん」
長い社内の廊下を、向こうの方から手を振って近づいて来るのは
この前まで遊んでいた女の子の中で1番頻繁に出かけていた子だ。
「ねぇ。今夜あたりどうかな?」
なんて可愛く笑う。

お互いに割り切った関係。
こんな関係は俺にとって楽で居心地が良かった。

「吉村ちゃん、ごめんな。俺フラフラすんのやめたとこなんだよ」
「え!なんで〜?」
「ん〜・・・」

彼女、かのじょ、か?
由布子さんを彼女って呼んでいいんだよ、な?

考え込んでいる俺に新田がため息をついて
「吉村さん、加賀はやっと本気の女と付き合いだしたんだよ」
俺の代わりに応えていた。
「え?加賀くんが?」
「そう」
「本気の彼女?」
新田の言葉に吉村ちゃんが怪訝そうな顔で俺の目の奥を覗く。

「そう」
「加賀くんにそんな子いたの?」
「いたの」
「へ、ぇ。あんなに遊びまわってたのに、ね」
「まぁね」
俺を飛び越して俺の話をしないでほしい。




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