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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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持つべきものは-10

「あっ!あたる君お帰りなさい。」
「おーあたる、随分帰るの遅かったじゃねーか…って俺にだけは言われたかないか。」
「父さん、妙子さん…。」

家の食卓で俺の帰りを待っていたのは他でもないいつも姿を見せない父と新しい母だ。

どうやらこの日は仕事を早く切り上げたそうだ。俺の為に。

「茂さん、やっぱ二人揃って家を空けるのはよくないですよ。」
「んー、それはまぁーそうなんだが。」

食卓の上には妙子さんの得意料理でもある鍋がぐつぐつと美味しい匂いを漂わせ。

「けどなんだって突然?」

当然の質問をぶつけた。

「実は今日スーパーに寄った時にねある女の子に会ったの、でねその子が言うのよ、「仕事も大切ですが、子供の寂しい思いを満たせてあげられるは親の愛情です」って。」
「……。」

スーパー。女の子…。

「お金だけが彼を幸せにする訳ではありませんって、それ聞いて確信したわよ、やっぱ温泉で働いてばかりじゃいけないって。」
「あいつはもう高3だし、もう立派な大人だと思って俺はあえて構わないようにしてたつもりだったけど。」
「親が普段から留守にしておいて立派も大人もないですわ、ねぇあたる君。」

俺も鍋をつつき、彼女の美味しい手料理を口にする。

「どう!美味しい?」
「…はい!とっても!」

家に帰っても部屋は暗く寒いものかと思っていたけど、こんな…。

俺は今まで封じ込めていた氷のように凍った感情が徐々に気持ちよく溶けていく、そんな気分に陥り。

「にしても妙子さんから電話がなかったら俺ら今日も家を空けてたな。」
「えぇー、その子に感謝ね、迷っていた私の背中を押してくれた感じで。」

水原、さん…。

「これからは、毎日って訳には行かないけど、なるべく今みたいに家に戻るから、私だって主婦でもあるし、貴方の母親な訳ですし。」
「俺はお前の為にもガンガン働くからな。」
「だからってこんな若い子に家事を押し付けてはいけませんよ?」
「そうだな、妙子さんビールまだある?」
「はいよ、あたる君は?」
「いや俺まだ未成年…。」
「うふふ、分かってるわよ、ご飯お替りは?」
「あっ、あぁいりますいります。」

どんどん溶け出していく、「親の居ない家庭なんてどこにでもある」「こんなもんだ」という名の我慢で出来た氷の感情。

そして溶け出した水が下水道に次々と流れ込み、その溢れる量の数だけ湧き上がる彼女への感謝と、そして。

自分に嘘はつかない事ね。

呼びかけるように思い浮かぶ友人のアドバイス。



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