妙子2-40
「研の好きな物ばかりでしょ」
「うむ」
「どうしたの? 食欲無いの?」
「飲みすぎたからな」
「折角作ったんだから残さないで食べてよ」
「うむ」
「ほら、口を開けて」
「ん?」
「はい」
「ムググ」
「もう1口」
「もういい、もういい」
「それじゃ私が食べちゃおう」
「ああ。全部食べてくれ」
「ボディコンなんて着てくるんじゃなかった」
「苦しいのか?」
「苦しくないよ。これは凄く伸びるからお相撲さんでも着られるんじゃないかな。でも、お腹が膨らむとみっともないから」
「お前は腹が出てても何処が出ててもみっともないことはない」
「食べさせようと思ってあんなこと言ってる」
「いや、本当だ」
「口が上手いんだから」
「お前はな、少し太ってから気が付いたんだが、コロコロしたところがお前の魅力なんだ」
「そんなの厭だ」
「魅力だと言ってるのに」
「スラッとしたいもん」
「いや。お前の場合は太っているから魅力的なんだ」
「本当?」
「もしお前が魅力が無かったら、さっきの連中がお前に絡んだりすると思うか?」
「そうか。そうだね」
「お前の体はセックスそのものっていう感じを持ってる。セックスが服着て歩いてるって感じなんだ」
「それって褒めてるの?」
「褒めてるんだ」
「それじゃ喜んじゃおう」
「そういう単純なところもお前の魅力だ」
「ふん。どうせ私は馬鹿です」
「膝のハンカチをちょっとどけてくれ」
「どうして?」
「そうすると下着が見える」
「馬鹿。見えないようにハンカチ乗せてるのに」
「馬鹿じゃない。後ろは誰もいないんだから、見せろ」
「それじゃ見せて上げる」
「うん。いい眺めだ。お前のそこの形は本当にいい」
「そう? そんなにいい?」
「いいな。その曲線は神様が作ったとしか思えない」
「ねえ、この頃正体不明の連中に襲われなくなったね」
「ああ。だが、もうじきケリを付ける」
「どうやって?」
「あいつの女がやってるスナックを見つけたんだ」
「久美ちゃんのお客さん?」
「ああ。女にスナックやらせてることは知ってたんだが、どこの店だかは知らなかった。それで若い者使って調べさせたんだ」
「それでどうするの? 殴りこむの?」
「そんなことはしない。話をつけに行くだけだ」
「どんな風に?」
「それは出たとこ勝負だ」
「大丈夫? 誰か連れてった方がいいんじゃない?」
「大丈夫だ。俺は1人が1番慣れていて好きなんだ」
「怪我しないでよ」
「ああ」
「怪我で済めばいいけど、命なんか落とさないでよ」
「ああ。ん? お前話だけでもう泣いてんじゃないか」
「だって研が死んだら私生きてられないよ」
「大袈裟な」
「馬鹿。大袈裟じゃないよ。本当だよ」
「そんなに惚れてるのか?」
「惚れてるよ」
「それじゃバイブ付きの皮パンツも文句言わずに穿くんだ」
「人が真面目な話してるのに」
「真面目な話だ。俺が明日死んだら『ああ、あの時研の言うとおりバイブ付きパンツを穿いて喜ばせとくんだった』と後悔するぞ」
「明日話をしに乗り込むの?」
「ああ」
「スナックだから夜行くんでしょ?」
「それはそうだ。何で?」
「そしたら今日帰ったら明日店に出かけるまでの間ずっとバイブ付きパンツを穿いてて上げる」
「ん? それじゃ明後日にしようかな」
「馬鹿」
「お前は可愛いな」
「死なないでよ」
「喧嘩しに行く訳じゃない」
「だって『ああそうですか』なんて研みたいにあっさり認めて謝ったりする人はいないよ」
「別に謝らなくてもいいんだ。もう馬鹿なことをやめてくれれば」
「だから、あっさりやめてくれるかな?」
「やめるだろう。ああいうことは金が掛かるからな」
「お金が掛かるって? 日当払って人を雇ってるの?」
「そうじゃないけど小遣いくらい渡さにゃならんから、似たようなもんだ。それに怪我して帰って来れば治療費も出してやらなきゃいかん」
「ふーん」