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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの誕生-1

某日早朝。この話は土方奈津子の部屋から始まった。
「ううん……」
奈津子がベッドで寝返りをうつと同時に奈津子の携帯が慌しく鳴り出した。
「も〜っ、誰よこんな朝から……」
まだまだ寝たりないという顔をしながら奈津子は携帯を取り着信相手を見た。相手は勤務先である出版社の後輩である友美だった。
プライベートの電話なら無視を決め込むところだが、こんな朝から電話をしてくるということは何かトラブったのであろう。
「はぁ、しょうがない……」
眠い目を擦り朦朧とした意識ながらベッドの上で電話に出る奈津子。
「どうしたの?」という言葉を全て言い切る前に友美は泣きそうな声で叫んできた。
「せんぱぁ〜い!助けてくださぁ〜い!!今日のモデルの娘がさっき事故にあって来れなくなっちゃったんですぅ!!」
奈津子は思わずため息と同時に頭を抱えてしまう。
可愛い後輩が自分を頼って電話をしてきたのに放置するのも可哀想か…。
そう考えると、奈津子は頭の中を休暇モードから仕事モードに切り替え友美に指示を出した。
「それで、事務所の方は連絡した?代わりの娘の手配もしなきゃいけないでしょ」
今にも泣き出しそうな友美の声に奈津子も優しい声で話しかける。
「先方の事務所にも連絡したんですが代わりになる娘がすぐ用意できないっていうんですよぉ〜!」
電話越しに友美の鼻声が聞こえてくる。
さて、本当に困ったなぁ……。
奈津子が友美をなだめつつ思案していると、急に電話から男の声が聞こえてきた。
「土方さん、おはようございます。川上です」
川上は同じ出版社の同僚でカメラマンをしている男だ。パニくってる友美では埒があかないと踏んで電話を変わったのだろう。
「川上くん、おはよう。早速で悪いんだけど、何か代わりのアイデアないかな?こっちは起きたばっかりでまだ頭が冴えてないのよねぇ」
奈津子は髪を掻き揚げながら、自分の机にある煙草に手を伸ばした。
「その件なんですけど、土方さんが以前に写真を見せてくれた男の子にお願いできませんかね?」
そういえば、先週に会社の飲み会で川上くん達に面白半分で従兄弟の圭介に女装(強制)させた写真を見せたっけ……。
煙草に火を点けながら思い出していると、川上の後ろで友美の同意する声が聞こえてきた。
「マジで?まぁ、今日は日曜だから圭介も捕まると思うけど本当にいいの?」
奈津子は思わず苦笑しながら川上に聞き返してしまった。
しかし、川上をはじめ圭介の写真を見た事のあるスタッフはやる気を出し盛り上がってしまっている。
「うちのメイクもスタイリストも気合を入れてやってくれるそうですから問題ないですよ!」
こうなったら仕方がない。圭介には気の毒だが、こっちも仕事がかかってるし皆のやる気を削ぐ訳にもいかないので無理矢理でも連れて行こう!
そう決心すると奈津子は川上に指示を出した。
「わかったわ。じゃあ、これから用意して圭介を連れて行くからすぐに準備できるようにしておいて」
煙草の火を灰皿で揉み消し、大まかな時間調整の打ち合わせをして通話を終了させると奈津子は立ち上がり急いで着替えを始めた。

それから30分後、奈津子は圭介の部屋に居た。
時計はまだ8時を少し回ったところだ。
「日曜の早朝に相沢家に訪れるのは何年ぶりだろう……」等と思いながら相沢家の玄関前に立つ奈津子。
玄関で奈津子を出迎えてくれた智香は「こんな早くにどうしたの?」と驚いていたが、今は一分一秒と時間が欲しいところだったので挨拶もそこそこに奈津子は圭介の部屋に上がっていくのだった。
そして、奈津子が圭介の部屋で最初に見た光景はあまりにも見事なくらい安らかに眠る圭介の寝姿だった。
「ほほう…この私が日曜の早朝から忙しくしているのに、この子はまだ惰眠を貪っていたか……」
圭介の部屋で笑顔を引きつらせ物騒な台詞を言う奈津子を後ろから心配そうに見ている智香の姿があった。
奈津子お姉ちゃん、それって完全な八つ当たりだよぉ……。
智香はそう思うものの奈津子の気迫に怯えてしまい何も言えない状態になってしまった。


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