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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの誕生-3

そんな心配をよそに圭介のメイクの過程を熱く語ってる友美の後ろから川上がまだ火の点いてない煙草を咥えながら奈津子のところに来る。
「いや〜、実物見たら本当に驚きましたよ。圭介くんあんなに変わるんですね。あれなら下手なモデルよりもイケてますよ。タッパもあるし」
笑いながら煙草に火を点ける川上。そんな川上をニヤケた笑いで楽しそうに答える奈津子だった。
「でも、あいつ男だし。惚れるなよぉ川上ぃ」
「あっははは。彼に惚れちゃったらマジでヤバいでしょ!俺、そっちの気ないし。でも、惚れちゃうかもなぁ」
川上がおどけながら切り返してくる。そんな川上に友美が怒りながら後ろから絡んでくる。
「川上さん、ダメですよ。圭介くんは川上さんには渡しません!でなくても川上さんは手が早いんですから!」
「圭介くんは早速、熱烈なファンが出来たみたいだな。しっかし、俺ってば節操なしみたいなこと言われてるな」
友美が頬を膨らませながら可愛らしく拳を握り主張する。川上は友美の態度が面白かったらしく友美の頭をポンポンと叩いていた。
「川上さん、人の頭をポンポン叩かないで下さい!それに、節操なしってところは間違ってないじゃないですか!」
友美は川上にそう言い切ると、何かを思い出したように奈津子に話しかけてきた。
「あ、話は変わるんですが、雑誌に載せるときの圭介くんの名前どうします?先輩」
友美が頭から川上の手を邪魔そうに退けると奈津子に尋ねた。
「あ〜、そういえば考えてなかったわ。まあ、私としては圭介のまんまで載せちゃっても面白いかなって思ったんだけどねぇ」
楽しそうに笑う奈津子を見て川上と友美はつくづく圭介を不憫に思い同情する。「土方さん(先輩)本当に貴女は鬼だ(です)…」と。
そんな二人をお構いなしに笑い転げた奈津子だったが、ふと思いついたように手を叩いた。
「そうだ!名前はケイにしてあげよう!安直だけど他の名前を考えるの面倒だし。それでいいよね?」
こうしようと決めた奈津子にどんな意見を言っても聞かないのを知ってる二人は「それで良いですよ」としか言い様がなかったのだった。

そんなやり取りをしている三人を他所に圭介のメイクは完了していた。
鏡の前で呆然としている圭介にお構いなしでメイクとスタイリストは自らの仕事にとても満足した笑顔であった。
圭介としては死ぬほど不本意で逃げ出したい気持ちではあったが、昔から奈津子に逆らえないように躾けられた事と弱みを握られている事があり、もし逃げたら後の仕打ちがとても恐いのでひたすら耐えるしかなかった。
「うんうん、よく似合ってるじゃん。いやぁ〜さっすが圭介くん、頼んでよかったわ。ここまでくると私もびっくりだよ」
ニヤニヤしながらわざとらしい台詞を言う奈津子を圭介は苦虫を噛み潰した表情で見ながらため息混じりに奈津子に最後の抵抗を試みた。
「奈津ねぇ、休日の早朝から叩き起こされて尚且つこんな格好をさせて俺が何をしたっていうのさ?悪い冗談だったらそろそろ勘弁してくれないか」
「冗談?とーんでもない!私はいたって本気よ。それから、圭介には今からモデルをしてもらうんだから」
「……この格好で……?」
「もちろん!男の格好のアンタなんてウチの雑誌には必要ないのよ!!あ、一応ギャラは払ってあげるから安心なさい」
「いや、そーゆー問題じゃなくて!なんで俺が女の格好して雑誌のモデルをしなきゃいけないのさ!こんな格好してるところを知り合いに見られたら外歩けないよ!」
「その事なら安心してウチのメイクとスタイリストを信用しなさい。この格好ならアンタだってことはバレはしないわよ!それに、こっちも今は人が足りないんだからここまできたら覚悟を決めなさい!男でしょ!!」
まあ、バレたらバレたで私は面白いんだけどね……。
そんな事をにこやかな顔で考えている奈津子を圭介は訝しげに見つつ思っていたことを口にしてしまう。
「奈津ねぇ…。今、とんでもないことを考えただろ?顔がニヤけてるぞ……」
「あら、失礼しちゃうわね。年上のレディに対してニヤけてるなんて……この子ったら女性に対する言葉遣いを知らないのかしら」
微妙に表情の変わった奈津子に対して圭介は身の危険を感じ、すぐフォローに入り自分の身の安全の確保に全力を尽くすことになった。
その様子は周りのスタッフ達の目に涙を誘うことになり、奈津子の機嫌を損ねた時の恐怖は後の語り草になっていった。


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