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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの誕生-4

結局、撮影を頑なに拒否していた圭介だったが奈津子の説得(脅迫)に屈してそのままモデルをすることになってしまった。
最初こそ嫌そうな顔をしていた圭介だったが川上の後ろから無言のプレッシャーをかけてくる奈津子に負け、最後にはそれなりの表情をするようになっていた。
「うん。いいねー、その表情!視線がクールな感じでとてもいい雰囲気だよ。あっ、顔をもうちょっとこっちに向けてくれるかな」
カメラのファインダーを覗きながら川上が圭介に指示を出していく。

…………………

「よっし、OK!お疲れ様!」
川上の声で撮影が終わり、圭介は深いため息を吐いた。
「圭介くん、お疲れ様。今日は本当にありがとうねっ!」
満面の笑顔で勢いよく圭介に抱きつく友美。着慣れない服と勢いよく抱きつかれた為か圭介は少しよろめいてしまう。
そのせいか、友美は圭介に抱きついたまま心配そうな表情で圭介の顔を見上げた。
「圭介くん大丈夫?疲れちゃった?」
「ううん。大丈夫大丈夫!いきなり友美さんに抱きつかれてちょっとびっくりしただけだよ」
「あっっ!?ご、ごめんねっ!!」
我に返った友美が今の状態を察し顔を真っ赤にしながら圭介から離れ、腕をバタバタさせながら慌てている。
「あ、あのね、今日は朝から大きなトラブルがあったから撮影が中止になっちゃうかもしれない状態だったけど、でもでも、圭介くんが助けてくれたおかげで撮影も無事に終わったら私すごく嬉しくなっちゃって、そうしたら急に嬉しくなっちゃって圭介くんに抱きついちゃったの……圭介くん。本当にゴメンね……」
「友美さん、気にしないで。まあ、ぶっちゃけこの仕事は微妙だったけど、友美さんみたいに可愛い女性に抱きつかれたのはマジで嬉しかったから。て、ゆーか役得って感じかな」
顔を真っ赤にしてモジモジしてる友美に対し、圭介は少し照れた笑顔で友美に話しかけた。
「しかし、女装の姿でこんなこと言っても締りがないなー」なんて事を内心思ってしまう圭介であった。
「ありがとう。圭介くんって優しいんだね……本当に好きになっちゃいそうだよ」
言葉の後の部分は声が小さくなり聞き取れなかったが、嬉しそうな笑顔だけど少し泣きそうな感じの潤んだ瞳で見つめる友美に圭介は思わずドキッとしてしまう。
「友美ーっ!ちょっとこっちに来てくれるー」
「はぁーい!今行きまぁーす!」
スタジオの奥で呼ぶ奈津子に元気よく友美が返事をすると、圭介に軽く手を振って奈津子のところへ走って行った。
「ふうっ。つっかれたぁー!!」
圭介は自分の近くにあった椅子に大股開きで腰をかけると大きなため息を吐いていると、そんな圭介を見ながら川上が笑いながら近づいてきた。
「圭介くん、お疲れ様。しっかし、その格好で男のリアクションされると外見と行動のギャップありすぎて笑えるね」
「あ……川上さん、お疲れ様です。でも、俺は正真正銘男ですから。それに、女装の趣味もないし」
「そりゃそうだよなぁ。朝、土方さんとあれだけ派手にやりあえば好きでこんな事(女装)してるんじゃないってのは嫌でも分かるよ」
おかしそうに笑っていた川上の顔が急に真剣になり、その変化に圭介は些か不安を感じた。
「圭介くん。いや、ケイ……今日、このあと時間は空いてるよね。今日は僕と飲みに行かないかい?雰囲気のいいバーを知ってるんだ」
川上は圭介の肩を抱き耳元で囁いてきた。
圭介は川上の行動に不安が的中したことを心の中で呪った。
「い、いや、このあと予定詰まってますんで……」
川上の言葉に思わず引きつった笑顔で必死に逃げようとする圭介に対し川上は更に顔を近付けてきた。
「なぁに言ってんの。土方さんからこの後の予定は入ってないってちゃんと聞いてるんだよ」
奈津ねぇ!ぜってー恨むぞーっ!!あの悪魔!!
背筋に寒気を感じながら圭介は心の中で奈津子に恨み言を言いつつ、椅子から立ち上がり外に向かってダッシュしつつ叫んだ。


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