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魚精
【その他 官能小説】

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魚精-6

(6)

 真っ暗だった。何も見えない暗黒の闇である。
はっとして身を強張らせたのは人の体に触れたからだった。隣に寄り添っている。
(裸……)
自身も服を着ていないことを知った。これもあの時と同じだ。
(少女!)
抱き寄せてそうではないとすぐにわかった。

 肌の質感、肉付き、まるで違ったのである。
「ああ……」
吐息が洩れて、その手が安田の体に巻き付いてくる。女の体がぴたりと密着し、続いて唇が重なって彼は女体を抱きしめた。
(女だ……別の女……)
たっぷり脂ののった、大人の女だ。
(イワナの精……)
思った通りだと体に熱が走った。
(恩返しだ)

 女は唇を離すと彼に重なり、胸に口を当て、そのまま熱い息を吹きかけながら下半身へと移動していった。肌を這う舌先の愛撫で、すでに肉棒は硬直している。
(やはり、熟女だ)
根元を握られて息が亀頭を被う。唇が触れる寸前にあることがわかる。
(ああ……咥えてくる)
だが、女の口は先端を外れ、太ももへ移行した。

 軽く吸引する唇。点描するように吸いながら移動していく。ときおり舌がチロチロと蛇のように触れてくる。もう一方にも同じように丹念な愛撫が繰り返された。あらゆる性感を意識して刺激しているのは明らかだった。
 太ももから口が離れて、いよいよと待っていると股が拡げられ、
(う……)
『袋』がすっぽり含まれたのである。予想外の部位であった。
(ああ、いい……)
吸い込まれた袋にまとわりつく舌、そして睾丸を転がす動き、強さ。それは絶妙な力加減であった。
(相当な経験者だ)
もっとも敏感な部分に愛撫が至っていないのに、安田は力が抜け始め、いずれ施される亀頭周辺に限界の充血を感じていた。

「うう!」
思わず声が洩れた。陶酔にさ中、先端が不意に咥えられたのだった。舐めながら徐々にくる。……そんな予測が外れていきなり含まれたので、その刺激は瞬時に最大限となった。
 ピストンは激しくはない。吸引も柔らかで、
(まるで、膣だ)
だからこその痺れるような快感であった。
「ああ、ああ……」
じっとしていられない。全身がうねる。気が付くと両手はシーツを掴んでいた。

 少しずつ動きが速くなって、口も小さくすぼまっていくのがわかる。その中に舌の回転、擦りが加わるのだからたまらない。
「むう!……」
快感が拡がり、膨らみ、上昇していった。
(イってしまう)
兆候が芽生えたのだ。

 安田は半身を起こして女を抱き寄せた。
「すてきだ、すてきだ」
たっぷりの肉体がずしりと胸にきた。
「灯りをつけてくれ」
「いけません。それはできません」
成熟した体を見てみたい。
「頼む。きれいな体を見たいんだ」
言いながら組み敷いて口を重ねて舌を差し入れた。
「うぐ……」
互いの息が撹拌する。

「点けるのでしたら、私は帰ります」
女の手が彼の胸を押した。
「わかった。このままでいい。だから……」 
 安田は女の胸に顔を埋めて、
「いかないでくれ」
乳房の豊かさは少女の何倍あるだろう。両手でも包み切れない膨らみである。それに、柔らかい。顔をこすりつけ、揉み上げる。
「ああ……」
息のように洩れる女の声は泣いているように聞こえた。

 股間に手を差し入れて驚いた。またしても、無毛だったのである。
(少女と同じだ)
裂け目に指を埋めると夥しいぬめりに指が浸った。差し入れるまでもなく膣口に吸い込まれていく。
「ああーん……」
甘い声とともに熱い息。脚が自ら開かれていく。

「君は、魚の精なの?神の淵から来たの?」
女は返事をしない。ただ歓喜に喘いでいる。
「今日のイワナは君なんだろう?」
指を抜き差しする。
「あ、あ、あ……」
膣が閉まり、また緩む。
(我慢できない)
挿入に移った。
 真っ暗で割れ目は見えない。だが、溢れた多量の液は宛がっただけでペニスを飲み込んだ。

「ああ、うう!」
押し込んで、突き立てた。突く度に締め上げてくる。
「君は、イワナだね。魚の精だね。逃がしてあげたから来てくれたんだろう?」
女の動きが止まり、喘ぎも聞こえなくなった。

「もう来ないでと言いましたよね」
その声はなぜか冷たさを感じさせた。女の脚は絡んでがっしりと安田の体に巻き付いている。
「それは……」
「私は傷を負いました。あなたはひどいことをしましたね」
表情もわからない暗闇の中に異様な臭気が漂ってきた。
(生臭い……)
どころではない。魚のはらわた、それも腐った臭いだった。
(なんだ、これは?)
 とっさに起き上がって立ち上がろうとしたが、立てない。ペニスが抜けないのだった。(そんなばかな)
「痛い!」
すんなり納めたペニスが癒着したかのように引いても外れない。結合部に触れて戦慄が走った。
(くっついている?)
あり得ない。挿入しているのではなく、同体になっていたのである。何度触っても『継ぎ目』がない。恐怖にかられた。耳をつんざく音と稲光が起こったのはその時であった。
「ぎゃ!」
一瞬の閃光に浮かび上がった女の顔に安田は悲鳴を上げた。かっと開いた口は真っ赤な血にまみれ、それはまるで死期間近の老婆の姿であった。  


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