第2章 特別ではない関係-1
様々な思いを胸に俊輔はその日の仕事を終えた。お迎えは余程の事がない限り亜里沙が行く。彩音の通う保育園は18時半を過ぎると延長料金が発生する。営業で外回りの多い俊輔はそれまでに会社を帰れる日は少ないので亜里沙に任せた。初めは亜里沙が送り迎えどちらもしていたが、亜里沙に任せっきりにするのも気が引けたので送りは俊輔、迎えは亜里沙と分担して協力して行く事にした。
この日、外回り中に実家に寄ってみた。部屋の押入れの奥から中学時代のアルバムを取り出した。20年前の写真だ、もはや自分の写真と言うよりも娘や息子の写真を見ているような感じがする。自分にもこんなあどけない時期があったんだなと思わず苦笑いしてしまった。
中学時代に好きだった恭子の写真がたくさんあった。中学3年の誕生日にプレゼントをもらってから交際が始まった。人生初彼女。しかも相思相愛の夢のような初恋だった。夏休みの内に初めてのデートを済ませた。少し遠出して遊園地に出かけた。電車に揺られ緊張しながら何とか会話を繋いだ事を覚えている。そして観覧車に乗った時に初キスを体験した。恭子の柔らかな唇が俊輔にとっての女への扉の入り口になった。恭子との距離がグッと縮まった。観覧車から降りるとお互い手を繋ぎ歩いていた。
恭子との付き合いは高校1年の夏前に終わった。別々の高校に進学しそれまでとは環境がガラッと変わった中、少しずつ気持ちが違う方向に向かい歩いて行くようになり、最後はお互いの気持ちが離れてしまい別れてしまった。中学3年のバレンタインデーの日に恭子と初体験を済ませた。お互い緊張しながらも最後は無事に結ばれた。大人の世界を知ってしまった俊輔はそれから急激にセックスに対して興味を抱いてしまい、会えば恭子にセックスを求めて来た。別の高校に通う事になった訳だが、会えばまずセックスを求めてくる俊輔に恭子が引いて行った事が直接的な別れた原因であった。付き合い始めた頃のドキドキ感を恋愛に求めていた恭子と、恋人にセックスを激しく求める俊輔の価値観の違いが別れた原因であった。もし恭子との出会いが高校であったなら周りの状況も手伝いもう少しはうまく行ったかも知れない。恭子にはまだセックスと言う愛情表現は早かったのであった。
現に恭子と別れた後に付き合い始めた柏木みゆきと言うテニス部の女子は恋愛におけるセックスの割合を高めに持っていた女子であった。みゆきとは良くセックスした思い出しかない。俊輔の性を一気に開花させてくれた彼女であった。そんなみゆきを思い出しながら俊輔はふと我に返る。
「ち、違う!恭子でもみゆきでもなくて友美だろ!?」
実家に寄りアルバムを漁りに来た本来の目的を忘れてしまった俊輔は友美が写っている写真を見つけて写メを撮り実家を出たのであった。