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Time Capsule
【初恋 恋愛小説】

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第1章 あの日の後悔-6

無視されてから暫くすると、意中の今泉恭子との距離が急に近くなった。その瞬間はいきなり訪れた。俊輔の誕生日は8月3日だ。夏休みの最中である。中学3年の誕生日に、なんと恭子が友達と2人で俊輔の家に訪れてい来たのであった。

友達に付き添われるように立っていた恭子は、友美に促され紙袋を俊輔に手渡した。
「な、永井君…、誕生日おめでとう。コレ…」
女子から誕生日プレゼントを貰う事など初めてであった俊輔は緊張してしまった。しかも心を寄せていた相手からのプレゼントだ。心臓がバクバクし頭の中が真っ白になった。
「あと…コレ…」
可愛らしい手紙も渡された。
「あ…、う、うん…」
プレゼントと一緒にその手紙を受け取る俊輔。すると恭子は恥ずかしそうにチョコチョコと後ろに下がり友達の後ろに隠れてしまった。

「じゃあ仲良くしてあげてね?」
友達はそう言って恭子を連れて歩き去って言った。
(ゆ、夢…??)
俊輔は信じられなかった。好きな子から誕生日プレゼントを手渡される…、その現実を落ちついて考えると、恭子も自分を好きだと言う事だ。
(い、今泉さんが俺の事を…好き…?)
急に胸がワクワクして来た。両想い…、何て素敵な響きだろう。体いっぱいに喜びが湧き上がった。部屋に返り勢いよくベッドにダイブし一人ではしゃいでしまった。
「今泉と両想い…!マジかよ…!!」
喜びを爆発させる俊輔。初恋の子から告白されたようなものだ。恋を知らぬ少年にとって嬉しくない訳がない。暫くベッドの上ではしゃいでいた。

俊輔は紙袋を開けた。するとプレゼントは俊輔が好きなスポーツブランドのタオルであった。しかも縁に手縫いで俊輔の名前が縫われていた。恭子が自分の名前を一生懸命に縫ってくれたんだと思うとこの世の中で自分が一番幸せなんじゃないかと思えてしまう程に舞い上がった。そして手紙を開け胸をドキドキさせながら読んだ瞬間、興奮してベッドの上を飛び跳ねた。好きです、付き合って下さい…、そう書かれていた。

「恭子ちゃん…」
俊輔は学校行事の際に撮影された写真が販売される度に密かに注文し買っていた恭子の写真を見つめてだらしない笑みを浮かべていた。
「で、デートしたい…。早くデートしたい…」
頭の中は恭子の事でいっぱいであった。

俊輔はなぜ友美に無視されるようになった訳も気づかぬまま恭子に心は奪われていった。この時、俊輔にとっての初恋は恭子ではなかった事実に気付けたのならば、また違う人生が待っていたのかもしれなかった。

今、友美に対する後悔を感じるとするならば、まさにその日の事であったと思う。友美の気持ちを踏み躙り恭子にうつつをぬかしていたあの日の自分に…。


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