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大事なものはね、
【青春 恋愛小説】

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大事なものはね、-2

そして、奴はあたしの隣にいる。なんでって??帰る方向が一緒だから。
「なーなー、俺、迷っちゃったんだけど、あんたクラス一緒だよな??」
そう話しかけられたとき、シカトしてやろうと思った。
でも、出来なかった。えー、あたしは小心者ですよ。
「なーなー、あんた、喋れないのー??」
「はぁ!?」
「だって、なんも喋ってくんないんだもん。」
それは、あんたが嫌いだからだよ。
「いたいけな転校生に、冷たくすんのー??」
あー、耳障り。
「あ、桜。」
「え??」
そこの桜の木は、なんだか切なげで。花びらを落としながら、何かを言っているかのようだった。
「きれー…。」
うっとりして、少し微笑んだ。
「あんた、そうゆう顔できんじゃん。そっちのほうがいい。」
なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのさ、なんて思ったけど、
「うん…。ありがと。」
と素直に答えてしまった。
心がくすぐったい。桜がキレイだから。
「あははっ。あんた、おもしれーな。」
「何がさ??」
「全部!!」
「全部って…あんた、あたしのこと、何も知らないでしょ!!」
「じゃぁ、なんとなく??」
「あたしに聞くなっ!!」
怒ってるあたしをよそに、奴はゲラゲラ笑ってる。
そこに恐怖感はなかった。なぜか、安心した…。
この時間が続けばいいと、思った。



「みなみ、高山君が好きー。」
それを聞いたのは、奴と初めて帰った5日後だった。
奴と帰るのが習慣化した。っていうより、あたしが帰ってるのを見つけると、奴が追っかけてくるようになった。
んでもって、最悪のパターン。
「そっかー、でも、またすぐ心変わりすんじゃん??」
軽く聞いてみた。
「んー…。どうだろう。」
そう恥らいながら言うみなみに、絶望を感じた。
奴から感じる恐怖感が何かわからない間は、みなみを奴に近づけたくなかった。
「そっかぁ…。頑張れ。」
心にもないけど、親友としてみなみにかけなくちゃいけない言葉をかけた。
ふふふ、とはにかむみなみは、恋する少女だった。
奴を見た。やっぱり恐怖ばかりが生まれる。


「ねぇ、あんた、なんか重大な秘密とかない??」
部活帰り、単刀直入に聞いてみた。
もし奴に対する恐怖感が何かわかれば、ある程度みなみの恋を応援してあげられる。
「はぁ!?俺の弱みでも握って、利用する気??」
「んなことしないって。」
「じゃぁ、なんで??」
「なんでもー!!いいから、言ってみ!!」
「おまえが言ったらな。」
「えー…。ないんだけど。ってか、人に言えないから秘密ってゆーの。」
「…その言葉、そっくりそのまま返すよ。」
たしかに。じゃぁ、どうすればいいんだろう。
「…俺な、施設育ちなの。」
「え!?」
「一家心中。でも、俺だけ生き残って…。」
ビックリした。こんなに明るい奴に、こんなに暗い過去があるなんて、考えてなかった。
「そんな…。」
「同情なんかすんなよ…。だって…。」
奴はあたしと向かい合った。そして真面目な顔をしてこう言った。
「これは嘘だから。」
「ぇ、へ??」
目が飛び出るかと思った。そんぐらい目を見開いた。
「おまえ…まじ、馬鹿ー!!」
ゲラゲラ笑う。
「だ、だましたなぁ!!」
ひっぱたいてやろうと思って、手を振り上げる。
奴は逃げていき、こっちを振り向いた。
蛍光灯の光の影になり、顔がよく見えなかったけど、目を細めて笑う奴に、また恐怖を感じた。


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