お世話いたします……-9
(9)
私の体は刺激による高揚と混乱で歩くことさえ覚束ない状態だった。
「このまま部屋に……」
「はい……」
お風呂から出たまま、バスタオルだけを体に巻き付け、社長の腕に縋っていた。俯いて心持ち身を縮めて歩いたのは誰かに見られているような不安の風に揺れていたからだった。リビングも食堂も何もかもが広い。声が響きそうな空間の中をタオル一枚の裸で歩いている。
(誰か来たら……)
何か忘れ物を取りに藤堂さんが来るかも。あの人ならカギを持っている。私はさらに身を屈めていた。
社長から体を求められてはいない。
『お願いがある』
応じて、一緒にお風呂に入った。体を洗うために。……
その行為の中で、私は自ら女を燃えさせていた。男と遠ざかっていた熟れた女の体はもはや身を投げ出す寸前であった。
「お願いがあるんだ」
私は黙って頷くとベッドに横になり、バスタオルを取った。
(いいですよ)
さらけ出した女体は愛液と昂ぶりに満ちてもうどうにもならない状態である。
(なんとかして!)
私からのお願いであった。
ところが社長は意外なことを言った。
「新田さん。お母さんの役をしてくれないか?」
「は?」
意味がわからず、
「お母さんって……」
「そういう雰囲気だけでいいんだ」
社長は私の横に寝ると、
「オッパイちゅうちゅうしたい」
乳首に吸い付いた。
「あ、」
痺れを伴う快感が走った。
(感じる!)
社長は目を瞑って一心に乳首を吸っている。くちゅくちゅ音をさせながら。……
(これって、愛撫なの?)
感じているから私にとっては愛撫である。だが、社長はひたすら乳首を咥えて赤ちゃんみたいに口を動かしている。時々唇を尖らせたり、乳首が口から外れそうになると顔を寄せて追ってくる。経験はないが、オッパイを飲む赤ちゃんってこんな感じなのかな。……
(かわいい……)
私は社長の頭をそっと撫でた。
「いっぱい飲んでね」
ふとやさしい言葉が洩れた。すると社長の腕が私に巻き付いてきた。
「ああ……」
背中に回った手が私を引き寄せていく。乳房がやわらかく社長の口辺につぶれた。
「もっと飲みたいの?」
「ううう!」
様子が変わった。顔をぐいぐい押し付けてくる。
「どうしたの?」
背中をさすりながら、私は不思議な感覚を味わっていた。
(感じている……)
敏感な乳首をおちょぼ口で吸い続けているのだから感じないはずはない。閉じている陰部は液が溢れて内腿にまで垂れている。だが、それとは異なる微妙な快感が一方に生まれていた。
(なんだろう?……)
社長の甘えた顔を見ているうちに性感を刺激されるのとは異質の心地よさが、しっとりと滲み始めたのである。
「ああ、感じてきた。もっと、やさしく、やさしくして」
社長は私にむしゃぶりついておなかに顔を埋めてまるで泣いているように声を上げた。
「やさしくしますよ。やさしくするわ」
「ああ、ああ……」
肌に密着した社長の唇の動きが変化したのがわかった。舌がぬっと肌を嘗め回し熱い息が男の『愛撫』に変わったのだった。
「ああ!」
唇は下腹部へとゆっくり肌を這っていく。両手が伸びてきて乳房を揉み、さっきまでしゃぶっていた乳首は指につままれてコリコリされた。
「うう!いい子、いい子よ」
社長の頭を撫でるつもりが、唇が繁みを越え、丘の膨らみに到達したことで自制が利かず体がうねった。秘核に迫る舌が割れ目に侵入する寸前だった。
「ああ!そこ!いい子!いい子!舐めてぇ!」
社長の頭を掴んで押し下げた。
その瞬間、息が止まるかと思った。クリトリスが舌先に捉えられた時である。
「おいしい、おいしい。お汁がおいしい」
ぺろぺろ、ジュクジュク、社長は割れ目を舐めまくる。
「いっぱい舐めて。かわいい子。いっぱいいっぱい飲むのよ」
「うううう!」
どういう絡みがあったのかわからない。気が付くと私が上になってペニスを咥えていた。
「僕ちゃん,可愛がって、可愛がって」
社長が連呼したように思う。
「いいわよ、いいわよ」
頭の中は朦朧とした状態だったが、昂奮はまっすぐだった。
「こんなに硬くなって、どうしたの?」
「知らない、知らない」
「可愛い可愛いしてあげる」
頬張ってみてその漲りように驚き、一段と昂奮した。私が跨って自ら一物を納めたのはほどなくのことである。
「くう!}
胎内にズンと響くような圧迫があっていっぱいに差し込まれたペニスは膣を拡げ、吼えた。
それからはひたすら突き進んだ。女上位で結合したのは初めてだった。よくすんなりいったものだと思う。女の体が欲情の赴くままに男を迎えたということだろうか。
「僕ちゃん、可愛い、僕ちゃん可愛い」
何度も口走っていた。その度に社長が腰を上げて応じた。絶頂に至ったのは間もなくのことだった。