の-8
クルーザーをマリーナに着けた時は日も落ち始めていて
2人は手をつなぎながらレストランに駆け込んだ。
そこは暖かくて俺たち以外の人が沢山いて
ホッとする。
これ以上2人きりでいたら白石の体温を求めて抱きしめそうだ。
マリーナのイタリアンレストランは
テーブルから夕日が落ちて行く様子がそのまま眺められた。
「素敵」
「うん。来てよかった」
白石と一緒に見られて、よかったよ。
「ねぇ」
「ん?」
「この席、わざわざ予約してくれたの?」
夕日に視線を向けたままそう聞いてきた。
「なんで?」
俺は視線を夕日から白石にそっと移す。
「お客さんが沢山いたのに、この席が空いてるって予約してくれたからでしょう」
「あのね。女の子はそんなこと気にしなくていいから」
手の内がばれた様で、可笑しくなって口元がほころぶ。
「こんな扱いに慣れてないみたい」
「じゃぁ慣れてよ」
そっと白石の視線が夕日から俺に移った。
「ずっと俺のそばにいて。こんな扱いをずっとしてあげる」
「・・・・」