第31話 『ペナルティ授業、理科と技術』-2
手順A番。 シュウ酸標準溶液が入ったビーカーの隣に別のコニカルビーカーを置く。 1組少女が3組少女の頭を掴み、鼻先を標準溶液につけた。 すると、少女はそのまま鼻から溶液を吸い、口から隣のビーカーに吐く。 1組少女が『20mLだよ』と耳元で囁き、やがて鼻を液体から離した。 3組少女の体感体積が正しければ、ホールピペットなど使わずとも、一定の体積を確保できる。
手順B番。 一番大きな500mLビーカーを無理矢理膣に押し込み、水酸化ナトリウムを計量する。 そのあと、シュウ酸標準溶液同様に、尿でもって溶解させ、腰ふりでもって撹拌する。 水酸化ナトリウムが溶けたことを見計らい、少女は机の上で土下座した。 尻を高々と掲げ、足首を外側に向ける学園特有の土下座だ。 さらに両手を尻に回し、左右から尻たぶをグイと割る。 尻たぶだけでは飽き足らない。 中央の肛門も、もっこり拡がった穴を晒す。
1組生は、注意深くビーカーから水酸化ナトリウムを肛門に注いだ。 薄いとはいえ強塩基試薬、注がれた瞬間粘膜に気泡が付着する。 シュワシュワ……嫌な音が少女のお腹の奥から聞こえる。 それでも1組生は手を止めず、500mLの半分ほど溜まった試薬を、すべて3組少女に飲み乾させた。 激痛に顔をゆがめつつ、3組少女が起きあがる。 ぐっと腰を落とした第3姿勢から、真下の『シュウ酸標準溶液』目掛けて排泄だ。
ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ……。
ゆっくり、一滴ずつ、狙いが逸れないように排泄する。 勢いが弱いせいで随所に気泡
がまじり、
ブピッ、ピシャッ、ブス……ッ。
思わず耳を塞ぎたくなる恥ずかしい放屁が連続した。 1組生が指示薬としてフェノールフタレインを加え、やがて標準溶液に赤色が残るようになる。 『滴定値は?』と尋ねる1組生に、3組少女は眉をよせて必死に考え、『35mLです』と答えた。 器具の役目は正しく滴下するだけではない。 メモリとして、滴下した量を直腸の張り具合から推測するのも大切な役目だ。
このあと食酢を再度水酸化ナトリウムで滴定した。 すべてのデータから1組生が導いた結論は、食酢原液の酢酸濃度が0.40(mol/L)――他のグループも似たり寄ったりの数値を示す。 教官が指導しなかったということは、概ね正解だったんだろう。
あとは片付けだ。 流し台の水槽に3組生の全身をつけ、穴という穴をこじあけて水を注ぎこむ。 特に水酸化ナトリウムを大量に呑まされた肛門付近は念入りに。 また、シュウ酸をすった鼻の穴も、指を突っ込んで内側粘膜をしっかり磨く。 3組少女たちは鼻も口も洗い場の浴槽に浸けられて、窒息寸前の苦しみの中、それでも抵抗せず、穴を洗われるに任せていた。 器具たるもの、自分から動くことなかれ――理科室での鉄則だ。
こうして全グループが時間内に実験を終えた。 廊下から鑑賞していた8号は、改めて理科担当の手際に感心する。 指導の強度を時間内に収めることは、常に8号がもっとも苦心する部分だ。 そこを難なくこなせる点が、正教員と彼女を隔てる能力差のような、そんな気がする。
「そういえば4限も合同授業だっけ……せっかくだから見に行くか」
誰に言うともなしに呟き、8号はその場を後にした。
……。
木曜日4限、技術。 【補号】はC棟二階の窓から第2グラウンドを眺めている。 本格的に涼しくなり、秋の気配がこくなった第二グラウンドに、1・2組総勢68名が集合していた。 一糸まとわぬ少女たちの前には、技術担当が用意した廃材が積んである。 廃材の内訳はというと『チェーン』『サドル』『ギア』『タイヤ』『ブレーキ』『グリップ』――察するに自転車をバラしたパーツのようだ。
「全員注目」
技術担当が腕を高くあげる。 掌には中型の『モーター』を握っている。
「せっかくの特別授業ですから、2組を題材に、生活必需品を作ります。 『モーター』と『銅線』、それから『コンデンサ』に『LEDライト』を33セット用意しました。 お前たちは2人1ペアになって、ここにある廃材とモーターを1セットから『発電機』を組立なさい。 授業終了5分前までに完成させて、最後の5分で実際に電流を流します。 電圧が低すぎてLEDライトが点灯しなかった場合、軽く指導するから、そのつもりで」
ざわ……。 最後の『指導』という単語に少女たちが反応した。 技術担当の指導は『電気ショック』が中心で、学園教員の中でも激痛ランクは上位にいる。 その分滅多に指導しないのだが、珍しく事前に指導を宣言したため、生徒たちに緊張が走った。