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「クビ」
社長は顔すら上げず、それだけを言うとまたパソコンの画面とにらめっこしていた。
ヒュー……と俺の周りに冷たい風が吹いた(ような気がした)。
いや、いやいやいや! ある程度は覚悟してましたけど、まさかそれだけって、そりゃあんまりでしょ!!
パソコンを凝視する三田さんは、すでに俺をいないものとみなして、カタカタとキーボードを打ち始め出した。
この人、見た目だけなら一般的なサンタクロースそのもので、ちょっと太った優しいおじいちゃんって風貌なのに、ビジネスに関しちゃ恐ろしいほど人間味が無い。
これで、世界中のサンタを信じる子供達にプレゼントを配る仕事を仕切るんだから。
「しゃ、社長……せめてお話を聞いて下さ……」
「聞くまでもない」
俺の言葉を一刀両断した三田さんは、パソコンのディスプレイからチラリと視線だけを動かした、が。
怖いんスよ、その鋭い目付きが!!
丸眼鏡の奥の瞳にビビってしまった俺は、ギリッと奥歯を噛み締めて俯いてしまった。
ちくしょー、言い訳すらできねぇ……。
三田さんの迫力に負けてしまい、すっかり黙ってしまった俺に、彼はフウ、と息を吐き出すと、その白ひげに隠れた唇をゆっくり開いた。
「配達先に子供がいなかったのは仕方ない。だがな、オレが怒ってるのはその後のお前の対応なんだよ!!」
バン、とデッカいデスクを叩く音に、思わず肩が縮こまる。
「どこの世界に子供にプレゼント配り損なった上に、人間の女と馴れ合って、セックスまでしてくるサンタクロースがいるんだよ!! あぁ!?」
三田さんの剣幕にすっかり萎縮してしまう俺。
でも、この人は間違ったことは何も言っていない。
人間の女に惚れて、抱いてしまった俺が100%悪いのだ。