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サンタ・カンパニーをクビになった奴らの行く末は、俺も知らない。
元々、空想上の世界で存在するような俺達が、サンタクロースの職を失うとその身がどうなるかすら知らないのだ。
地獄に落とされるとか、存在自体が消えてしまうとか、噂ばかりが一人歩きしてしまって、真実なんて闇の中。
だけどいい噂を聞かない時点で、サンタ・カンパニーをクビになった奴らの末路はろくでもないもんだってのは、容易に想像できる。
どれたけ子供達に夢を与える仕事に尽くしてきても、クビが飛んだ時点で恐ろしい世界に飛ばされるなんて、ここはとんだブラック企業だったんだ。
そう思うと、今自分が着ているサンタクロースの制服すら忌々しく思えてくる。
莉奈の家を出たその足でまっすぐここに戻ってきたから、今はまだ25日の朝。クリスマスの当日だ。
サンタ・カンパニーのオフィスは、昨日と今日の2日間はずっとクリスマスソングがBGMとして流れているけれど、その楽しそうな歌声や鈴の音すら腹立たしかった。
「……というわけで、お前は今からサンタクロースの職を解く」
「え、も、もうですか!? せめて引き継ぎとか……」
クリスマスイヴにプレゼントを配り終えて、今日の仕事は売上げ入力がメインとなる。
それを済ませて今年のクリスマスの仕事は完了するのだ。
あと一歩で今年の仕事を終えることが出来るのだから、クビにするのはそれが終わってからでも……。
そう訴えようと、三田さんの顔を見ると、彼は指をパチンと鳴らした所。
その音と共に、急に目の前が真っ白になっていった。
やがてそれは目も開けていられないほど眩しくなっていき、それと共に意識が遠のいていく。
嘘だろ、こんなすぐに消えてしまうなんて……!!
「社長! 待って下さい!! せめてもう少し心の準備を……」
地面に立っている感覚すらなくなっていき、いよいよヤバいと俺の頭が警報を鳴らす。
イヤだ。消えたくなんてないし、地獄にだって行きたくねぇ!!
まばゆい光と遠のく意識と戦いながら、三田さんと思わしき黒い影に向かって必死で叫ぼうとするも、声すらもはや出てこない。
もうダメか……!
完全に意識を失う一歩手前の所で、
「メリークリスマス」
と、三田さんのあざ笑うような声だけが耳に残っていた。