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「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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05.謀計-1

五《謀計》
 嶺士の話を黙って訊いていたミカが目を閉じたまま言った。
「亜弓ちゃんがいそうな場所の心当たりは?」
「いくつかありますけど、探す気にはなれません」
「心配じゃないのか? 嶺士」ケンジが訊いた。
「いいんだよ。あいつ自身頭を冷やすって言ってるんだから。好きにすりゃいいんだ」
 嶺士は吐き捨てるように言った。
「おまえは?」ミカが目を上げた。「おまえはそれでいいのか? 今のおまえの気持ちの方がよっぽど気がかりだ」
「あんなあばずれ知ったことじゃないです。大丈夫。今日は迷惑をかけちまったけど、明日からちゃんと仕事、真面目にやります、ミカさん」
 向かいに座ったミカは大きなため息をついた。
「明日はおまえ、非番だ。おまえの方こそ一日ゆっくり頭を冷やしてろ」
 嶺士はばつが悪そうに頭を掻き、申し訳なさそうに言った。
「じゃ、俺、失礼します。今日は迷惑掛けてすいませんでした」
 嶺士は頭を深々と下げて事務所を出た。

 ミカは手をこまぬいたままケンジに目を向けた。
「どうする? ケンジ」
「マユに話してみるよ」
「マユミに?」
「うん。あいつは高校時代嶺士と同じ部活だったわけだしさ」
 ケンジはそういいながらポケットからスマホを取りだした。
「(あ、ケン兄、どうしたの?)」
「マユ、実は折り入って頼みたいことがあってさ」
「(なに?)」
「今から店に行っていいか? ミカも一緒に」
「(うん、いいよ。そろそろ閉店だし。待ってる)」

 ケンジとミカはすぐにシンチョコを訪ねた。そしてついさっき事務所で聞いた嶺士の家庭内のごたごたを、高校当時嶺士とは同級生で同じ水泳部でマネージャーを務めていたマユミに話して聞かせた。
 聞き終わったマユミは、にこにこしながらケンジの顔を見た。
「ご心配なく」
「え? なんだよ、嬉しそうに」
「亜弓ちゃんはうちでかくまってるんだよ」
「なにっ?」ミカが大声を出した。
「ほんとか? 何で早く言わない?」
「だって、ケン兄たちがこの事件に絡んでいるなんて知らなかったんだもん」
「で、どんな感じ? 亜弓ちゃんの様子」
 マユミはふうとため息をついて眉尻を下げた。
「落ち込んでるよ。嶺士君は本当のことをまだ知らないって」
「本当のこと?」
「少しだけ聞いてみたけど、ちょっと話が複雑なんだよ……」マユミはケンジとミカのカップにデキャンタからコーヒーを注ぎ足した。「あの子が全てを話す気になって、嶺士君が納得して二人が落ち着いたら聞いてやって。嶺士君から」
「もちろん」
「で、あたし思いついたんだけど、」マユミが身を乗り出した。「ユカリに頼んで嶺士君の今の気持ちを確かめてもらって、亜弓ちゃんとの関係を修復してもらおうと思ってるんだけどどうかな?」
「ユカリって、あんたの部活の同級生だったあの弾けた娘?」ミカがコーヒーのカップを口から離して言った。
「うん。あたし今もつき合いがあるけど、当時もとっても仲良しだった」
「なんでユカリさんに?」ケンジがカップを持ち上げて訊いた。
「高校時代、嶺士君とユカリ、つき合ってたんだよ。後輩の亜弓ちゃんのこともとっても可愛がってたし」
「嶺士とつき合ってた?」
「うん。ユカリの初体験の相手だよ、嶺士君」マユミはさらりと言って、カップを口に運んだ。「それにあの子、カウンセラーの資格持ってるからね」
 ケンジは少し不安そうな表情で言った。
「彼女が臨床心理士だってこと、今でも信じ難いんだが……」
「アプローチの仕方が特殊だからね、ユカリは。でも今の嶺士君みたいなクライアントなんて得意中の得意だと思うよ」マユミはにこにこ笑いながらテーブルのチョコレートに手を伸ばした。



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