まけないで!ピュアドルチェ-1
【フッフッフッフッフ・・・いかがかなピュアドルチェ?……我がしもべ、女王アントラーの唇の味は?】
「!?」
どこからともなく。
悪意のこもった不気味な声が響いてきて、あたしは周囲を見渡しました。
でも、このひとけのない路地裏には、捕まえられたあたしと女王アントラー以外、誰もいません。
【どこを見ておる、我はここだ】
よりハッキリと声が響いて、舌を舌でもてあそばれながらもあたし、そっちを見ました。
【ようやく気づいたか、ピュアドルチェ】
あたしの身体におおいかぶさる、黒衣の女王。
あたしのくちびるをむさぼり続ける彼女自身の右手に握られた、黒光りする、まがまがしいステッキ。
その球状の先端が横一文字に裂けて、前歯を見せながらニヤリとほほえんでいます。
【我こそはいにしえの創造主、魔王の使いし伝説のデコペン、ディヴァインキング・・・さあ、お前もこの女王のように快楽に身をゆだね、忠実な我がしもべとなるがよい!!】
!?!?!?
で、デコペンがしゃべってる!?
し、しかも、本当のわるものは女王じゃなくて、この黒いデコペンのほうだなんて!?
【さあ、まずは診察をしてやろうか?】
黒デコペンはそういうと、女王の手のなかで黒いオーラをにじませながら、小さな聴診器に姿を変えました。
そのまま女王はあたしのくちびるから離れ、右手に構えた黒く脈打つ聴診器をソッと、あたしに近付けてきたのです。
もがくばかりで逃げることもできないあたしの胸元に、聴診器が密着しようとする、その瞬間。
【ベロン!!】
聴診器の先端が裂けて、細長い舌が飛び出してきました。
「ひゃアんっ!!」
その舌はムチのようにしなると、エナジーを失って無防備な、クリームやマシュマロで出来たコスチュームをベロリ、と舐め削りはじめたのです。
マシュマロみたいにモコモコの白い制服は、イチゴのボタンごとえぐられて、どんどんその面積をうしなってゆきます。
ケーキみたいなバラのかたちのクリームで飾られた、短いスカートも、ズタズタ。
そのせいで、ただでさえチラチラ見えていたかわいいアンスコが、正面からほとんど丸見えにされてゆきます。
あっ、やだ。
あたしのおっぱいが、舐め残しのマシュマロやクリームをへばりつかせて、あらわになっちゃいました。
まだかろうじて、恥ずかしい先端は顔を出していないけれど。
でも、あとひと舐めかふた舐めすれば、すぐに出てきちゃいそうです。
そのうえよく見ると、アンスコ。
あたしの体温で溶け始めたのか、うっすらと黒い毛が透けて見えちゃってる。
【レラレラレラレラ・・・】
「!?」
黒デコペンのふざけた声に顔をあげると、クリームを舐め採った舌の先端で、あたしのコスチュームについていたイチゴがふたつ、くるくる舐め転がされて、まるでジャグリングのようにもてあそばれていました。
ヒョイ、バクバクッ。
ごっくん。
【・・・う〜ん、さすがに新鮮で甘酸っぱいイチゴだな?……美味なり、美味なり】
頭上にほうりあげた3つのイチゴをひと飲みにしながら、黒デコペンはしたつづみを打ちました。
【残り少ないとはいえ、この味……質の良い、極上のエナジーであるぞ?】
プププッ。
まるでスイカの種を飛ばすようないきおいで、黒デコペンの口から3つ、イチゴのヘタが吐き出されました。
「なによ、ひきょうもの!!」
そんなバカにした態度に腹が立って、思わずあたし、黒デコペンに向かってどなり声をあげていました。
「動けない女の子をいじめてよろこんでるなんて、サイテーなんだからッ!!」
【ホホウ、まだそんな生意気な口をきく元気が残っているのか・・・おもしろい】
あたしの怒りなんて気にしないようすでニヤニヤと笑いながら、黒デコペンからまたも陰気なオーラがたちのぼり、ぐにゃぐにゃとその形を変えてゆきます。
「!?」
【しゃきーん♪】
聴診器だった黒デコペンが、女王の手の中でおっきな注射器に変身しました。
「な、何をする気!?……や、やめ、こ、この、ひきょうもの!!」
どうやら黒デコペンにあやつられているのでしょう。うつろな無表情の女王アントラーによって、黒注射器のするどい針が迫ってきます。
【だーいじょうぶ大丈夫、痛くないイタくなーい……ただの媚薬だからね?・・・保険きかないけど】
「び、ビヤクってなに!?……ヘンなもの注射しないでよ!!」
【ぶっすん♪】
黒い液体をしたたらせた先端が、溶けたマシュマロまみれのあたしの腕に、するどい痛みを走らせました。
「な、なによう・・・そんなもの、打たれたってあたし、、負けないんだから!!」
【なつかしいぞ、その言葉】
液体をすべて出しきって、抜かれた黒注射器が、もとの黒デコペンに姿を戻しながら、
【ナニもかも懐かしい……かつてこの女王も、同じように我に負け惜しみを言ったものだったぞ?】
そう言うと、
【さあ、我がしもべアントラーよ、お前のチカラで我が媚薬の効き目、思い知らせてやるが良い】
女王に向かって、不気味な声で命令をくだしました。